るつぼ The Crucible 公演情報 るつぼ The Crucible」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.5
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  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    価格12,000円

    名作とされ、繰り返し上演されているのはどうして? 観劇の動機はこれです。
    役者、演出家にとって、チャレンジのし甲斐がある作品だから。これが答えです。私なりの。
    力のある役者が演じないと、ただの長い芝居になってしまう。主人公に限らず、どの役であっても。
    この舞台では、濃密な時間・空間を味わうことができました。
    中年女性で埋まる客席。坂本昌行の古くからのファンなのかな。若くないところに歴史を感じる。松崎祐介ファンも一定数? みんな感想はSNSで発信するのかな。上演回数、動員人数のわりに、この「Corichクチコミ」はほとんどありません。マーケットが違う感があります。The商業演劇と小劇場演劇と。世界が重なっていないのかな。
    しかしそれはおおいにけっこうなことだと思います。
    テレビの人気者が動員を支えて、立派な舞台ができる。であれば、良いことです。
    アイドルさん、スターさんが結節点になっているわけです。
    ちなみに私は、那須佐代子さんのほうから来ました。
    ■「悲しみを聴く石」(2015年12月、演出:上村聡史、出演:那須佐代子ほか)
    ■「いま、ここにある武器」(2016年8月、出演:那須佐代子、斉藤直樹ほか)
    ■「終夜」(2019年9-10月、演出:上村聡史、出演:那須佐代子、斉藤直樹ほか)
     ※()内の個人名はいずれも、今回の「るつぼ」に関わる方々。
    これらを観て、今回の「るつぼ」は信頼できそうだと思って、チケットを買いました。
    信頼とは。
    「必ずや観る価値のある舞台に仕上がっていることでしょう」という期待感かな。
    那須佐代子さん、素敵ですよねぇ。オーナーとして劇場を運営して、作品をプロデュースしているなんて。
    今回、老女の役でした。ご自身の実年齢よりはるかに上であろうおばあさんの役でしたが、リアル老女。舞台がピリっとしまるんです、彼女が言葉を発すると。
    舞台は床に傾斜があって、前に向かって下がっているようで、前の人がしゃがまなくても記念撮影ができる的な状態です。見やすいです。フォーメーションが前後になっていても後ろの人のお顔がよく見えます。
    大道具は、ずっとある馬蹄形の台以外は、ベッドや机・イスなど最小限の家具だけで、舞台転換に時間をとらないところもよかったです。
    衣装もよく世界観を作っていて素敵でした。

    ネタバレBOX

    (実際のセリフを一言一句覚えているわけではありませんので、以下はすべて自分の記憶から再構成した表現です)
    「今までこの基準で死刑にしちゃってきたから、今さら変えられない」と裁判官が言う場面がありました。
    恐ろしくて震えます。
    この裁判官は、「今まで自分がしてきたことはまちがってたのかも」と、内心では揺らいでいるんです。いやむしろ、まちがってたな、まちがってたよ、と思っているんです。
    にもかかわらず、「それでやってきちゃったから自分は変えない」と主張するんです。
    敗けるとわかっている戦争を続けた心理にも似ています。
    自身の判断一つで改めることが可能な状況にあるのに、そうはしないんです。人の命がかかっているというのに!
    日本では法律や校則の運用に、こういうことがいっぱいあると思います。
    人の命がかかっていても、そうじゃなくても、こうであってほしくない! そう思いました。
  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    作品のベースになっている「セイラム魔女裁判」、いつのことなんだろうと思って調べると
    アメリカ独立からほんの100年前、もうそろそろ近代に入るか入らないかの話で愕然としたのと
    https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%BB%E3%82%A4%E3%83%A9%E3%83%A0%E9%AD%94%E5%A5%B3%E8%A3%81%E5%88%A4

    作中で大勢の犠牲が生じることへの理屈として“新しい時代”だからという言葉が多用されたの、
    フランス革命にしろ(ちょうどアメリカ独立と同時期)、赤狩りにしろ結局は同じような流れに
    なるんだなと「歴史の恐ろしさと学ばなさ」をひしひし感じてしまった。

    事件後から数年して、主たる登場人物は現実の歴史の中でだいたい不幸に終わったのも示唆的
    だな。パットナム夫妻(裁判後にそろって病死して、告訴人だった娘は裁判を謝罪して最後は
    親と一緒に墓標なしで葬られたらしい)とか。

    ネタバレBOX

    現代医学だとひきつけ、幻覚、集団ヒステリー、無気力などなど、作中で起こったことは全部
    精神的な原因で説明がつくし、鑑賞している人のほとんどはそれに気付いているだろうと
    思われるだけに、あからさますぎる「魔女の呪い」を大勢が疑いもなく信じちゃうことにすごい
    ストレスすら感じると思うんですよね。結果的に19人が無実の罪で処刑されているわけだし。

    この作品で恐ろしいのは、ジョン・プロクターと密通し切り捨てられる形で叩き出された
    元使用人アビゲイルの「復讐」が一応の動機ということになっているけど、実際のところは
    どうなのか分かんないところなんですよね。

    俺に対する復讐だろう!というのはあくまでジョンの言い分に過ぎないわけで、本当は
    みんなで夜遊びしてたのがバレて糾弾されるのが怖くてウソついたのが後戻りできなく
    なっていって……かもしれないし、なにか心の奥底で差別や偏見があったのかもしれない。

    一番最初に訴えられたサラ・グッドがなんか周囲と違うから疎ましくて消したいと、少女
    たちは願っていたのかもしれない。でも、アビゲイルの口からその本当の考えが聴ける
    機会って(敢えてなんだろうけど)一番最初にジョンと痴話喧嘩したときくらいなんですよね。

    決まって歴史が動いたときって、ちょっとした事件とか誰かの言動みたいなものが発端で、
    それに伴って大勢の人生がおかしくなったり犠牲が出たりしてるんだけどすごく嫌なことだなと。

    そしてラスト、アビゲイルの「側近」の少女たちが逃げ出し始めたことが語られていたけど、
    「独裁官」に持ち上げられるようになったアビゲイルの時代がもうすぐ(あまり良くはなさそうな
    形で)終わりを迎えて、魔女と取引したという罪で死ぬことになったジョンが復権するだろうこと、
    これも歴史の残酷さを描いてて、

    陰謀論など形を変えた「魔女狩り」が実はSNSを通じて簡単に蔓延しやすくなった2020年代に
    リアルな作品だなと、劇場側の狙いを強く感じたわけでした。現に、登場人物の性格付けが
    非常に上手くて「ああこういう立場の人とか、こういうムーブする人とかこれから出てきそう
    だし、なんなら今まさにいるだろうね」と頷いちゃうわけだし……。

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