るつぼ The Crucible 公演情報 るつぼ The Crucible」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 5.0
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  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    作品のベースになっている「セイラム魔女裁判」、いつのことなんだろうと思って調べると
    アメリカ独立からほんの100年前、もうそろそろ近代に入るか入らないかの話で愕然としたのと
    https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%BB%E3%82%A4%E3%83%A9%E3%83%A0%E9%AD%94%E5%A5%B3%E8%A3%81%E5%88%A4

    作中で大勢の犠牲が生じることへの理屈として“新しい時代”だからという言葉が多用されたの、
    フランス革命にしろ(ちょうどアメリカ独立と同時期)、赤狩りにしろ結局は同じような流れに
    なるんだなと「歴史の恐ろしさと学ばなさ」をひしひし感じてしまった。

    事件後から数年して、主たる登場人物は現実の歴史の中でだいたい不幸に終わったのも示唆的
    だな。パットナム夫妻(裁判後にそろって病死して、告訴人だった娘は裁判を謝罪して最後は
    親と一緒に墓標なしで葬られたらしい)とか。

    ネタバレBOX

    現代医学だとひきつけ、幻覚、集団ヒステリー、無気力などなど、作中で起こったことは全部
    精神的な原因で説明がつくし、鑑賞している人のほとんどはそれに気付いているだろうと
    思われるだけに、あからさますぎる「魔女の呪い」を大勢が疑いもなく信じちゃうことにすごい
    ストレスすら感じると思うんですよね。結果的に19人が無実の罪で処刑されているわけだし。

    この作品で恐ろしいのは、ジョン・プロクターと密通し切り捨てられる形で叩き出された
    元使用人アビゲイルの「復讐」が一応の動機ということになっているけど、実際のところは
    どうなのか分かんないところなんですよね。

    俺に対する復讐だろう!というのはあくまでジョンの言い分に過ぎないわけで、本当は
    みんなで夜遊びしてたのがバレて糾弾されるのが怖くてウソついたのが後戻りできなく
    なっていって……かもしれないし、なにか心の奥底で差別や偏見があったのかもしれない。

    一番最初に訴えられたサラ・グッドがなんか周囲と違うから疎ましくて消したいと、少女
    たちは願っていたのかもしれない。でも、アビゲイルの口からその本当の考えが聴ける
    機会って(敢えてなんだろうけど)一番最初にジョンと痴話喧嘩したときくらいなんですよね。

    決まって歴史が動いたときって、ちょっとした事件とか誰かの言動みたいなものが発端で、
    それに伴って大勢の人生がおかしくなったり犠牲が出たりしてるんだけどすごく嫌なことだなと。

    そしてラスト、アビゲイルの「側近」の少女たちが逃げ出し始めたことが語られていたけど、
    「独裁官」に持ち上げられるようになったアビゲイルの時代がもうすぐ(あまり良くはなさそうな
    形で)終わりを迎えて、魔女と取引したという罪で死ぬことになったジョンが復権するだろうこと、
    これも歴史の残酷さを描いてて、

    陰謀論など形を変えた「魔女狩り」が実はSNSを通じて簡単に蔓延しやすくなった2020年代に
    リアルな作品だなと、劇場側の狙いを強く感じたわけでした。現に、登場人物の性格付けが
    非常に上手くて「ああこういう立場の人とか、こういうムーブする人とかこれから出てきそう
    だし、なんなら今まさにいるだろうね」と頷いちゃうわけだし……。

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