滝沢家の内乱 公演情報 滝沢家の内乱」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.0
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  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    鑑賞日2025/07/03 (木) 14:00

    座席1階

    南総里見八犬伝を著した滝沢馬琴一家の物語。カトケン事務所で4演目となる舞台だが、自分は初めて拝見する。今作は、加藤健一自らが演出した。出演は滝沢馬琴を演じる加藤健一と、馬琴の息子の嫁・お路を演じる加藤忍の二人だけ。「師弟関係」と称される二人の息がぴったり合った演技の細部が見どころだ。

    名作を書いた著名戯作者だが、生活は苦しい。馬琴の妻・お百や息子の宗伯は病気がち。薬づくりをするお路の稼ぎが頼り。日々の暮らしから逃れるように屋根に上って星空を眺める馬琴。寄り添うように自分も屋根に上るお路がけなげだ。
    馬琴はしだいに視力を失い、執筆が不可能になる。「武士にしたかった」という長男の宗伯も死んでしまう。「まだ若いから自由に生きなさい」と滝沢家を出るように言う馬琴だが、お路は馬琴の申し出を拒み、まともに字も書けないのに馬琴の指導で口述筆記にのめり込む。

    15分の休憩をはさんで2時間半。2人は舞台の上でも固い絆に結ばれた師弟関係となって二人三脚で大作を完成させる。難しい人名の漢字を筆を後ろから握って教える場面など、この2人ならではの美しい演技が続く。加藤忍の澄んだ声、今や老境を演じさせたら右に出るものはいないと思われる加藤健一の名演技が舞台の感動を高めていく。

    ただ、今作でお百の声を担当した高畑淳子、宗伯の声を演じた風間杜夫が舞台に登場しないのはいかにも惜しい。せめて、病気ではあるものの馬琴に絡みつくような生活を続けるお百を演じた高畑淳子は、声だけではもったいない。確実に馬琴とお路を浮かび上がらせる名バイプレーヤーの役割を果たしただろうと思う。

    今作は長野県や島根県などの地方公演が8月まで続く。加藤忍と加藤健一が出るカトケン事務所のお芝居ではトップレベルの秀作だ。見ないと損するかも。

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