『A Number―数』『What If If Only―もしも もしせめて』 公演情報 『A Number―数』『What If If Only―もしも もしせめて』」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 3.3
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  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    2002年発表の「A Number」、2021年発表の「What If If Only」という2つの作品を、20年の時を超えて
    ひとまとめに上演しようという野心的な試み。後者の上演時間が20数分しかないため、事実上の
    「A Number」への導入として読み取るべきなのかな、と。

    「A Number」は3人目のクローンの存在が重要なのは分かるけど、調理の仕方、もしくは出し方を
    ちょっと間違った感があって、そのために戯曲のテーマに入り込めなかった感がある。なされる
    会話もちょっと意味深で分かりにくいし……。

    ネタバレBOX

    ●What If If Only

    とある住居の一室で愛する大切な存在を最近失ったとおぼしき男性の悔いと思慕に満ちた独白で始まる本作。
    男性は愛する存在が今ここにいてくれたら……と心より願うが、そんな彼のもとに

    「起こらなかった未来の亡霊」(赤いドレスを着込む)
    「現在の亡霊」(黒づくめの恰好でやはり黒いハットをかぶる)
    「唯一残った未来の亡霊」(赤いカジュアルな身なりの若者)

    が次々とやってきて……という話。おそらくだけどディケンズ「クリスマス・キャロル」を下敷きにしていると
    思われる。

    男性は「起こらなかった未来の亡霊」に愛する存在と会わせてほしいと懇願するが、相手はすでにその未来は死んで
    しまった、他の同様のものと同じく決してかなうことがない願いだと告げる。しかし「唯一の未来の亡霊」は自らを
    知らず、無限に持つ可能性にも無頓着でただ「(何かが)起きるよ!」と声を上げるのみ。

    かなりファンタジックで設定もぼかされている部分が多いので、人はただ不確定な未来にのみ希望を良くも悪くも
    見出せる、という話として受け取りました。

    ●A Number

    4歳の息子を亡くしたある男がクローンを作り出すも、医療機関側の違反行為によって20人もの外見が
    同じわが子が生まれてしまった。そのうちの1人である粗暴なクローンは父親のもとを訪れ、自分の
    不遇さを訴えるとともに、自分と同じ顔をしながら恵まれた生活を送っているかのようにみえるもう1人を
    殺す、と宣言する……。

    言い回しのせいか登場人物たちが置かれている立場が断片的にしか分からず、あらすじ解説にだいぶ助けられた
    感がある……。

    あと、3人目のクローンは家族に恵まれ、人生にもさほど苦悩していないようで、「クローンはある人と全員が同じ
    見かけをしているけど人生まで同じってわけじゃないんだよ」ということを言いたかったのかもだけど、人が2人
    死んだ締めくくりとしてはちょっとなんだかな~って思っちゃったかな。
  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    鑑賞日2024/09/21 (土) 18:00

    キャリル・チャーチルの後期の短編2話を上演。不思議な面白さ。23分(20分休み)66分。
     『What If If Only-もしも もしせめて』は小品。男(大東駿介)が亡き恋人の不在を嘆くと、突如謎の人物(浅野和之)が現われ、…、の物語。男(大東)は困惑するが、その困惑を更に進めるかのように別の謎の人物(浅野・2役)と少年が現われる。起こりえないだろう数多くの未来の一つが現在になる、ということなのだろうか。
     『A Number-数』は短編。息子のクローンを多数作られた父(堤真一)がその何人か(瀬戸康史・何役か)と出会うが…、の物語。同じ遺伝子でも違った人間に育つ、ということをベースにした展開。
     どちらも舞台美術やプロジェクション・マッピングを使った効果が見事だが、『数』でのマッピングの効果が特に凄い。

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    SFは最も芝居にしにくい領域ではないだろうか。ファンタジーと違って、サイエンスだからどこかで現実とつながっていないと、只の絵空事になってしまう。イギリスの人気劇作家のSF短編二編。二本合わせて、藝ナカ2時間もないのに、11000円の席はもちろん三階席まで売れて世田谷三、四十代夫人を主に満席。小説の方は特に売れるベストセラー以外のSFは売れ行き不振というのに、こひらはチケット争奪戦である。
    最初が、「What if it only(もしも もしせめて)」で25分。時間未来もので、一人の男(大東駿介)が、どうなるか解らぬ未来に出会ってみる、という話。突然予想もしないドアの陰から異形の人物が現われたり、天井から老人が現われたり、理詰めではない(いや、あるのだろうが解らない)世界を幻のように体験する。次の「A Number(数)」は複製人間が可能になった世界で、息子(瀬戸康史)のいのちを再生した父(堤真一)が複数の息子に会うことになるが、その世界は父の意のごとくならず、という教訓めいた話である。
    見どころは、マッピングを使った舞台で、この劇場の高い天井に向かって上下する四角い升のエレベーターのような舞台が設定されている。舞台は簡素な一人部屋だったり(もしも)、応接セット(数)だったりするが、劇の前後では舞台ごと、さらにアンコールでは、急速に天井に向かったり、下がったりする。そこは現実にはなにも起きていなくて、マッピングによって観客は映像を見ているだけなのだろうが、この舞台の内容には非常に上手くマッチしている。後で考えれば、だからどうと言うことはない、と言うところも洒落ていると言えば洒落ているのだが、SF作品にありがちの狐につままれたような感じがよくできていた。
    役者は人気者揃いで皆神妙に務めてはいるし、客もみなさんご満足のようだけど、これで11000円?良いんですか?

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