実演鑑賞
満足度★★★★★
何度見てもほれぼれするザ・エンターテインメントである。しかし、それだけではない。無力な女性がメディアや弁護士を巧みに使って、男社会の中でしたたかにのし上がる、女性賛歌、フェミニズムの作品ととれないこともない。とんでもない悪女だけれど。金次第でどんな嘘でもつくビリー・フリンの一方で、愚鈍なほど正直で影の薄い夫のエイモス・ハートも、きちんとソロで丸々一曲歌う(ミスター・セロファン)見せ場がある(「君の時間を取りすぎてないと良いけれど」と控えめですらある)。
また真実や正義などそっちのけで、売れるネタに飛びつくマスコミのセンセーショナリズム、腕利き弁護士の弁舌一つで陪審員の採決が変わる衆愚裁判、そしてすべては金次第というアメリカの軽薄さを暴いている。「この国がいかに素晴らしいか、私たちこそ「生きた見本」です」と歌うフィナーレは、アメリカ大衆社会への痛烈な皮肉である。こうしたアメリカの破廉恥と退廃を、極上のエンターテインメントにしてしまうこと自体、アメリカのしたたかさを示している。