先日TOKYOハンバーグのワークショップでディスカッションしたネタをご紹介致します。ハーバードのサンデルが飯の種にしている例のアレです。
…昔々、ある漁船が遭難しました。
乗組員は四人。食糧も尽き水も尽き、助けも望めない状態が続きました。
喉の渇きに耐えきれなくなった若い乗組員が、ベテランの制止を振り切って海水をがぶ飲みしてしまったのです。
その青年はみるみる衰弱していきました。
残された三人は青年にトドメを刺し、彼の肉を食べて生き延びたのでした…
さて、この殺人の是非について論じましょう。というのがお題でした。
演劇というのは、ヒーローが悪でも成立しますし、何より観客という絶対的なジャッジが存在しますから、教育や学習によって後付けされた価値観で物事を色分けする事は大して意味をなしません。
しかし、あーでもないこーでもないと『考える』トレーニングとしては面白いと思います。
さて、私が想像力を掻き立てられたのは、
1.仮に、殺人に反対してたやつが居たとすれば、そいつがどんな変わり身を見せて肉にありついたのか?
2.食後の三人
であります。
1.に関しては、品行方正、学級委員長的な人物であればあるほどイイですね。
『さっきはあんな事言っちゃったけど、俺も生き延びたいんだよぉぉ!!頼むよぉぉ!!』
『もし…もし次に誰か殺さなきゃならなくなつたら、俺!!俺を殺していいからさぁぁ…頼むよぉぉ喰わしてくれよぉぉ!』
貴重な水分をここぞとばかりに目から放出し、額をデッキに擦り付け、秘密にしてたけど…どうやら嫁にガキが出来たらしいだの、おふくろに親孝行してやりてえだの、あらんかぎりの嘘を並べ立てる委員長。
『足の小指…いや、ちんこ!!ちんこでいいから喰わして…下さいぃぃ!!』
昨夜『神様は見ていなさる』などと聖職者のようなセリフを吐いたその口で、ちんこを食べるのでした。
2.食後の三人。
少し位はホッとして、家族との再開に想いを馳せたりするのでしょうか?
そして、骨だけにしちゃったコイツの遺族に合わす顔、どうしよう?などと悩んだりするのでしょうか?
それとも、残りの二人に対する猜疑心で頭が一杯なのでしょうか?
黙々と喰われても怖い。
かといって、味の感想など話されてもなお怖い。
さんざん祈ったけど助けは来ない。
ああ、こんな事なら教会に寄付なんかせずに宝くじでも買えば良かったんだ。
そうすりゃ今頃、網元になっていたかも…。
いや、タラレバしてる場合じゃねえ、今をシノグにはどうしたら…何でコイツら黙ってンだ!
まさかグル!?
委員長…ちんこだけって言ってたクセにタマまで喰ってやがる。テメエの神は何を見てんだ!?こうゆう奴が一番信用出来ねえ…!
テメエらまとめて…いや待てよ。この暑さだ、今やっちまったら明日には腐り始めるに違いねえ、もうちょい待って我慢出来なくなってから…って待ってる間に俺が殺られる危険性も…。
えー、またしても収集がつかなくなって参りましたし、今回の公演もばっちり携わっております!
ちなみに私は『食べる』派です。