満足度★★★★
若い世代にこそ観てほしい名作
「夕鶴」「蛙昇天」「子午線の祀り」「オットーと呼ばれる日本人」などで知られる劇作家・木下順二の追悼公演。
木下は「山脈」で、反逆と不倫を描いた。木下の言葉を借りれば、「本質的に非常にエゴイスティックな恋愛」を通して、生涯のテーマである「個人が抹殺されることによってでなければ、歴史ってのはつくりだされてこないだろう」という主張を浮き彫りにしている。東京演劇アンサンブルの芝居は、いつも観た後に深く考えさせられるものが多く、本作もそのひとつ。
戦争中、軍人でない市民たちは、いったい何を思って生きていたのかを追体験でき、やはり、若い作家が想像で描く戦争とは違う。その点で、若い人に多く観て貰いたい作品。所見の日も、いつもと違い、若い観客で満席だった。
上演時間3時間(休憩こみ)だが、まったく長さを感じさせない。