アナニアシヴィリ「ロミオとジュリエット」/「ジゼル」 公演情報 アナニアシヴィリ「ロミオとジュリエット」/「ジゼル」」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 3.0
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  • 満足度★★★

    一期一会
    ニーナ・アナニアシヴィリというバレリーナを知ったのは1992年の来日公演の模様を収録したDVDで「白鳥の湖」と「ドン・キホーテ」を見たのが最初。
    2007年にグルジア国立バレエの公演で来日して、DVDで見たのと同じ演目を初めてナマで見た後、翌年にはアメリカン・バレエ・シアターの一員として来日した「海賊」を見た。その存在を知ったときにはすでに40歳を越えていたわけで、来日のたびにこれが最後だと思いつつ見に出かけている。

    ネタバレBOX

    グルジア国立バレエでニーナ・アナニアシヴィリが主演する2本目は「ロミオとジュリエット」。バレエのロミジュリといえばケネス・マクミランの振付が有名ではないかと思うが、今回の振付はレオニード・ラヴロフスキーという人が担当。音楽はどちらもセルゲイ・プロコフィエフ。
    マクミラン版に比べると演劇的な要素が弱まっていて、芝居として演じられていた箇所が踊りになっていたりする。
    またツッコミどころとしては、キャピュレット家の舞踏会にロミオが忍び込む際、マクミラン版ではキャピュレット家の仮面舞踏会という設定なので、ロミオと彼の仲間が仮面をつけて潜入しても怪しまれることはなかったが、今回の場合はキャピュレット家の人々は誰も仮面をつけていない、つまり仮面舞踏会ではなくただの舞踏会という設定なので、ロミオたちが仮面をつけて現れたらかえって怪しまれるはずなのに、それをとがめる人は劇中には誰もいない。

    ジゼルでは体型的にちょっと無理を感じたアナニアシヴィリの娘役だが、今回のジュリエットでは若いころに踊る彼女の姿が容易に想像できた。マタニティ・ドレスのように、乳房のすぐ下で絞りこまれている衣装のせいで、腰まわりがあまり目立たなかったということもあるだろうが、なによりも彼女の動きが2日前に見たジゼルとはずいぶん変化しているように思えた。
  • ジゼル月間
    今月はバレエ作品「ジゼル」を3本見る予定で、これがその1本目。演じるのはグルジア国立バレエのニーナ・アナニアシヴィリ。1963年生まれで、今月末には47歳になる。同い年のアレッサンドラ・フェリは3年前に引退したし、本人も長年在籍していたアメリカン・バレエ・シアターを去年退団して、故国グルジアのバレエ団に籍を移して指導的な立場で貢献するつもりらしい。彼女がグルジアではなく、ロシアの生まれだったら、もうとっくに引退していたかもしれない。
    今回の来日公演では「ジゼル」と「ロミオとジュリエット」のヒロインを演じる。チラシのうたい文句にはどちらも「日本最後の」という文字が踊っている。ジゼルもジュリエットも考えてみれば10代の娘の役なので、特に出産を経験して体つきがふっくらとした彼女が演じるにはちょっと無理があるのだが、もともと好きなダンサーなので、見られるうちに見ておこうという思いで、とりあえず高いチケットを買った。

    ネタバレBOX

    バレエ作品はいろんな人がいろんな振付をしているが、「ジゼル」はその中では比較的変化が少ないほうだと思う。今回の作品はそんな中で目に付く違いがいくつかあった。それも従来のものよりは悪い方向に変わっている。
    後半はウィリという死霊の世界で物語が展開するのだが、そのウィリの首領であるミルタが登場する際、両足とも爪先で立って、舞台の袖から中央まで正面を向いたまま真横に移動して、舞台中央まで来ると直角に進路変更して、舞台前方までこれも爪先立ちのままで前進する、というのが見せ場になっている。ミルタを演じたのはラリ・カンデラキというダンサーだったが、彼女はそれをやらず、舞台の対角線上を爪先立ちで移動しただけだった。
    もう一つ、ジゼルという作品で特徴的な振付として、ウィリの世界に新顔としてジゼルが加わる際、ミルタに導かれてキリキリと体を回転される場面があるのだが、これも省略されていた。
    ほかにもジゼルに横恋慕する村の青年ヒラリオンというのが、プログラムでは森番のハンスという名前に変わっている。もともとバレエには台詞がないから、どういう名前であってもかまわないとはいえ、なぜプログラムでだけわざわざ名前を変更したのかが謎だ。それと、演じるイラクリ・バフターゼという人の顔つきはどう見ても悪役だった。

    もう一つ気づいた相違点は、前半でジゼルの恋人であるアルブレヒトが貴族という身分を悟られないために剣を小屋に隠すところ。従来の作品ではその小屋は無人のはずだが、今回は老婆が住んでいて、金をもらって剣を預かるという設定になっている。

    ジゼルを除いて、後半に登場するウィリの数はミルタも含めてたしか25人。群舞に関しては日本のバレエ団でもっといいものを見たことがある。改悪されたとしか思えない今回の振付を見ていると、バレエ団の技量に合わせて踊りの難易度を意図的に下げたのではないかとさえ思えてくる。

    前半は衣装のせいもあって、アナニアシヴィリの演じるジゼルがどうしても若い娘には見えず、踊りの技量以前に、見た目からくる配役的な無理を感じてしまった。後半はなんとか見られたけれど、「ジゼル」という作品については、彼女がもっと細身だったころに見たかったというのが正直なところ。動きの面ではそれほど年齢を感じなかったし、もともとフィギュアスケートをやっていてバレエにスカウトされたという彼女の踊りは、抜群のバランス感覚が下地にあるので、回転や爪先立ちは今でも非常に安定感がある。

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