ちょっとした夢のはなし〈演劇と映画〉 公演情報 ちょっとした夢のはなし〈演劇と映画〉」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 3.8
1-4件 / 4件中
  • 満足度★★★★

    ちょっとした、理想の、舞台
    今は、自由な時代。演劇のスタイルも、多種多様。それは、定まったスタイルが存在しない、無法地帯ともいうべき状況。

    そんな時代に観ると、ワイルダーの演劇は、とても地味にみえるかもしれない。でも、1920年代当時のアメリカでは、この、「セットなし」とか、「イスを並べて、自動車にみたてる」というような、今では当たり前のセッティングが衝撃的で、劇場付きの大道具の組合と、裁判ざたになったほど。

    当時の観客たちも、きっと、相当びっくりしたのだろうと思うけど、今回の、中野成樹演出は、そういうびっくりを、別の仕方で、再現しようとしていた。僕は、気持ちよく、驚いた。

    ネタバレBOX

    劇場に入ると、とっても素朴な、木箱みたいな小さな舞台。切り紙のちっちゃな家並みや、草が、ちょこんと貼付けてある。舞台の後ろは、黒い仕切りになっていて、見えない。照明は、勉強机にありそうな、ちっちゃなスタンドひとつ。

    隣に、ちっちゃなDJブース。「今日のテーマ/旅」と書いてあって、「ハイウェイ/くるり」とか、今、流れている音楽が書かれたボードが出ている。舞台の真上に、 "NOW PLAYING"の文字。この文字が、後からじわじわ効いてくる。

    音楽がやんで、暗くなると、父、母、娘、息子の4人が、私服みたいな普通の格好で出てくる。曲名だったボードは、演じられている場面のタイトルにかわる。

    物語は、一家4人で、嫁いだ長女の家に、車で小旅行に出かける、それだけの話。お葬式の行列をみてしんみりしたり、看板のキャッチコピーで遊んだり、ちょっとしたいさかいがあったり。とっても暖かい、一家の旅路。

    4人を演じているのは、平均年齢21歳くらいの大学生たち。「欲のない芝居になってると思う」とあるけど、非常に素直に、清々しく、淡々と、結婚25年の夫婦と、高校生姉弟を演じる雰囲気が、あっさりとしたテイストの作品にぴったり。観客席は、ほほえましく、舞台を、見守る。

    第一次大戦後の話なので、作品には、ほんのり、死の影が。これから訪ねる長女も、実は、死産で、母体も危なかった。でも、その話はほんの少し。ご飯の話をしている内に、ずっとブースにいたDJが立ち上がって、仕事から帰ってきた長女の旦那さんとなる。そのまま、みんな下がって、終了。

    すると、舞台の後ろの、黒い仕切りが取り払われて、壁をべりべりっとはがすと、その裏に、 "PLAY LIST"とあって、「看板で遊んだ」とか、「ホットドックを食べた」とか「こっそりお化粧をしてみた」とか、舞台上で演じられた、一家の旅行で起きた、些細な出来事が、全部びっしり書いてある。

    びっくりした。そうか、DJは、虚構の舞台と客席とを結ぶ、ステージマネージャーだったのか、とわかる。そして、ああ、この演出は、舞台は虚構で、日常の些細な出来事にこそ、真実があると言い続けた、ワイルダーを読み込んだ成果なのだろう、と思った。

    「誤意訳」とあるが、戯曲との違いはわずか。原作には、この、理想的な家族のいる、理想的な社会が、既に終わりに近づいていることを暗示させるせりふがいくつかあるけど、主に、そういうものが、カットされている。このちょっとした剪定も、「トレントン・カムデンへの、幸せな旅行」という題を、「ちょっとした夢のはなし」と変えたのも、理想の終わってしまった現在が、それでもかわらないものと一緒に、浮かび上がることを意図してのものだろう。だから、観劇後、どこか切ない。

    続けて上映された映画は、同じ原作で、同じキャスト。舞台では許される「虚構」が、まっとうな演出になると、とたんに許されなくなる。面白かったけれど、ワイルダーとは関係ない作品になってしまっていて、物足りなかった。

    中野成樹は、本当にワイルダーが好きな様子。「いつか、ワイルダー祭『わいわいワイルダー』をやりたい」と、冗談半分に言っていたが、本当にやってほしい。次も観たいと思わせる、地味だけど、確かな作品だった。
  • 満足度★★★★

    初の中野氏作品
    中野さんのお芝居、「観たいよ~観たいよ~」と思いつつ、ようやく観る事が出来ました♪価格も良心的で、且つ中野さんの演出が堪能出来る小品というのは、初心者には嬉しい感じです☆

    前評判通り”デートで観る事が出来る”演劇でした。「演劇だぞ」という肩肘張った感がなく(いや、それはそれで好きなんですけどね・笑)、お芝居素人さんを誘っても気軽に行く事が出来るのでは?STスポットをこういう風に使うんだ、という点でも新鮮。個人的には生演奏が爽やかで驚きでした~。旋律の一つ一つは簡単そうなのに(スイマセン;)グッとくる素敵なハーモニー。

    次は是非、本公演を観劇したいと思います!

  • 満足度★★★

    まぁそんな感じ。
    中野さんの芝居は実に一年ぶりの鑑賞。前回は大学で、今回は大学生を中心にって事で、いつかフランケンズも見たいと思ってるんだけども。
    初STスポット。良い具合の空気があって、ああいう芝居にはもってこいの場所なのではないでしょうか。
    芝居自体も優しい空気があって、派手じゃないし、短かかったけども見ごたえのあるモノのように感じました。
    自分的にはちょっともの足りない感じがとても新鮮で、20歳そこらの大学生で家族を作るってことがまず悪くないって要素だったんだと思う。明かりや音響も御洒落といったら言い過ぎかもしれないが、学生劇団などでで良く見られるどうでも良いような変に凝ったスタッフワークを見るよりは良いモノ見たなと思える出来だったと思う。
    次回は来年にマクベスをやると言っていたので是非期待したい。

    最後に、映画はいらなかったと思う。芝居のみで終わらせるべきだったのではないでしょうか。

  • 満足度★★★★

    遠き過去に日は落ちて。
    なるほど、家族でドライブをするという派手さの欠片もない話だ。
    それでも、グッときてしまうのは、自分の過去と共振するからだろうか。
    共振というか、既視感というか、心臓が記憶していることを思い出す感じ。
    抽象論に終始してしまうが、それこそ普遍性と呼んで差し支えあるまい。

    オオカミ男という大学生チームとの仕事ということで少し不安もあった。
    だが、何のことはない。確かにそこに家族はあった。

    演劇上演後に映画もあるが、こちらもひと味違った視点が感じられて◎。
    一粒で二度美味しい仕様になっていると思う。

    STで短々とした仕事を観る小一時間は、小さくも確かで幸せな時間だ。

    ネタバレBOX

    「車から降りなさい」って、怒られたことがある、気がする。
    酷く怖かった記憶の一つだ。

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