『夫のオリカタ』 公演情報 『夫のオリカタ』」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 5.0
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  • 満足度★★★★★

    なんか、いばさんがちょっと今までと違う作風の作品を書き始めた…っていうのは、ツイートやこの前の「想い出づくり」で感じていました。今回もその装いこそストレートな感じはあるのですが、やはり後味は「既存の価値観に抗うもの」ではないかと思えました。…それは個人の「幸せのアリカタ」。

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    ネタバレBOX

    (続き)
    故人に囚われて生きることを、社会一般では良しとしないことが多いし、創作の世界ですら…それを乗り越えて現実を歩き出す結末が多い気がします。

    でも、そんなの社会の都合に過ぎないんじゃないか…と思わせる後味。
    結局、小春の生き様のどこにも後ろ向きなところは無い。想う人と伴に、その想いを全うした年月。
    「私、ちゃんと生きたよ」の言葉が本当に沁みてくる。その前の「その後の報告」辺りから、純一の何気ない言葉をずっと守ってきた空気がじわっと襲ってきて、目頭が熱くなりました。アレはハッピーエンドの物語であったと強く信じます。

    さて今回の公演、会場選定まで含めた演出が高く評価され、場所の佇まいのみならず自然光でのライティングが絶賛の嵐。私が今更言うまでもないですが、その他にも演出がお話の想像をかなり膨らませてくれたことに唸っています

    それは客入れから板付きとなっていた香澄の存在…いやここは早川さんと言うべきか。あの…話に絡まないのに絶妙な存在感を放ち、意味ありげに繰り広げられるその所作。
    …私、最前の下手端から斜めに舞台を観ていたので、上手の早川さんは必ず視界に入るんですよ。しかも、早川さんの"役"を知らずに観に来ていたので、その所作を巡って、ストーリーと人間関係の想像が膨らむこと膨らむこと。夫婦の関係を揺るがす工作員説、…純一との共謀説、時間軸をずらして舞台に同時に出現させた小春の未来説… それらの想像は一切合切外れるのですが(笑)、あんなにさり気ない演出であんなに惑わされることになるとは思いもしなくて…正直、我がことながら驚きました。…本筋とは別の可能性を多岐に追って、一人でお話を何倍も楽しんでいた自信があります笑。ぶどうさんにしてやられた。

    主人公・小春。みさきさんの甘える表情…純一にからかわれ、不満気に口を尖らす…全幅の信頼と愛情を持って、純一に首をもたれかける…ああもう何てことでしょう。微笑ましすぎて眼がとろけそうでした。やっかみで爆発しろとも言うことを許さぬ、圧倒的な幸せのオーラが振りまかれていました。

    夫・純一。キレない・あるいは変人じゃない…貴重なタケジュンさんの芝居。
    …何たる善人感。特に香澄の語る幼少時の純一の逸話がその人格を膨らませていて、そのイメージ通りの数々の所作に唸る。文句の付けようがないわぁ。あの幸福そうな立ち位置を演じておいて、男にそう思わせるって、ホント、良い空気を作ってくれましたよ。…そして、2人が作り続ける折り紙が、ホント良かった。まさしく想いが折り込まれていく様であり、時間の経過を如実に表現したり、積み重ねた想いを物量的に視覚化させる最高の小道具。

    謎の女(笑)・香澄。このところ、幼い役が多かった早川さんの落ち着いた大人の女性役は新鮮でもあるが、とても板についていて…というか年相応なのか(笑)

    先述の通り、私は中盤まで彼女の芝居にかなり惑わされましたが、立ち位置が分かってきてからの芝居もしっとり2人への想いが伝わってきて、たぶん小春が想いを貫けた陰には、香澄の想いと気遣いがあるんじゃないかと思えて、二人の終盤の心の交感が素敵でした。そして、それ故にラストシーンの花吹雪を香澄が散らすのには、小道具としての都合じゃなくて、演出上の大きな意図があると思えました。

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