満足度★★★★
鑑賞日2018/03/22 (木) 19:00
座席1階1列11番
ドストエフスキー「罪と罰」を、戦中(とはいえ、まだ日華事変辺り)の日本に翻案した作品。
敢えて、戦時下の日本にしたのは、戦争という大義における「罪」と、その「罰」の在り方を、個人における「罪」と「罰」の意義と対比させる狙いがあったのだと思う。
ただ、その試みは鮮明ではなく、あまりうまく機能しているようには思えない。
しかし、一方で主人公が試みる殺人の「罪」と「罰」の有り様は極めて鮮明に描かれていて、これはこれで主人公の傲慢と懊悩は強く観客に伝わってきて、それだけで十分にドラマとしては成立していて、見応えは十分。
むしろ、戦争という背景なしに、現代に翻案してしまったら、もっとしっくり来たのかもしれない。(ただ、だとすると、妹の境遇や主人公が助ける娼婦の存在が描けずに、物語の深掘りができずに、話自体が浅薄になったかもしれないけれど)
舞台装置の法廷は、このドラマの設定をうまく象徴している。
でも、タイトルは「罪と罰」の方がしっくりきたけれどなあ。まあ、ドストエフスキーの原作まんまと勘違いしないようにという配慮なのかもしれないけれど、「鎮魂歌」というと、誰の魂を、となるので、ちょっと的外れな感じがするけれど。(けして、主人公の魂は救われることがないので)