五反田怪団 公演情報 五反田怪団」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 3.0
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  • 満足度★★★

    なんでもない世界
    昼と夜の間、黄昏時の五反田は、とても不思議なところ。超近代的なソニーの工場の真向かいに、うらぶれた工場跡、アトリエヘリコプターが、ぽっかりとした佇まいを見せる。

    こういう、境目、「間」にある空白では、何かが起こるかも……。

    ネタバレBOX

    みんな靴を脱いで、畳の上で、ぐるりと囲んで怪談話。「怪談を収集することを生業にしている」「吉田くん」と、なぜか「怪談話を恒例行事にしなければならない使命感」にかられる「前田さん」。

    「霊的に強いと言われる劇団」青年団のメンバー二人(吉田くん曰く「僕らの業界でも、青年団と言えば、霊的に知られる劇団」)が、話の幅に厚みをきかせる。

    京都からは、「霊的な仕事をしながら俳優をやっている」三人に、助っ人として「バイトを休んで」来てもらって、除霊関係もばっちり。

    ……この設定の紹介だけで、なんとも言えない空気が、伝わればいいのだけれど。僕らは、受付はじめ、スタッフ合わせて、五反田団のメンバー総出で作り出される、この、怖がっていいのか、笑っていいのか、ギリギリのボーダーの上を綱渡りする空気の中を、最後まで宙吊りのまま、体験させられる。

    よくよく考えられているのか、たまたまなのか。怪談話は、こちらの世界と、あちらの世界の「間」の世界、空白の世界、という話を中心に、進められる。それは、例えば、頭の中で想像したイメージの世界だったり、夢の世界だったりする。そしてもちろん、生きてるものはいないのかもしれない、現前する死の世界だったりもする。間、空白。

    そう、五反田怪団の空気は、全く、怪談なのか、ギャグなのか、真面目なのか、ふざけてるのか、それらの中心に、ぽっかり空いた空白地帯だ。つまりは、前田司郎さんの、いつもの感じなのだけれど、ファンのつどいのような、内輪の空気の側にぶれながらも、そちらに傾ききることはない。

    最後、かなり長めの、しかも結構凄惨な怪談話が、笑うところなしに続いた後、とんでもないやり方で、「オワリ」の文字が、唐突に出てくる。そのまま、無言で、出演者全員、引き上げて終了。観客全員、唖然。声も出ないし、拍手もない。本当に、この瞬間、無駄に、観客の心は、ひとつになった。「どうしたらいいの?」

    なんでもない世界が、一瞬、開ける。いや、開かなくてもいい世界かもしれないけど、この感覚は、他では味わえない、独特のものだ。

    演劇ではなく、「語る」という体なので、みんな、意味のないジェスチャーをしながら語る。ダンスまがいの過剰なジェスチャーと、伝わらない日本語で語られる、「斉藤くん」の「怖くない話」が挿入されることで強調される、こういう、普通の仕草が、なんだか、チェルフィッチュのパロディーのようにも見えた。どこまでも、意味のない、本当になにもない空間。

    五反田怪団で本当に怖いのは、この、空白なのだ。僕は、圧倒的な、この無意味な空白を前に、ただ、笑うしかないのだった。

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