満足度★★★★
始まってすぐに、思い入れのある原作の懐かしい台詞や場面にまずじんわりした。
わかってるはずの展開なのに、少年たちの心の動きに寄り添うように涙ぐんでしまう。
あの台詞、あの場面、そうだ、あのとき彼はああ言った、そういう記憶が堰を切ったように流れ込んでくる。
それぞれの場面で、歯をくいしばるように何度も読み返した彼らの心のひだが、生身の人間の演じる姿となって現れる。
母に捨てられ、父に疎まれ、大切な人を亡くしながら、それでも生き続けようと思えるのは、大切な仲間を見つけたから。
些細な手違いで離れてしまった仲間との再会に旗を振るアンジーの姿。
原作前半のいくつかのエピソードを約2時間の舞台にまとめ上げた脚本の手腕とキャスト陣の繊細な演技が物語のエッセンスを丁重に紡いで、美しい舞台が立ち上がっていた。
4人の少年たちも、周囲の人々もそれぞれ原作を大切に演じられているように感じられた。特に、グレアムを演じた岩崎さんの声が自分のイメージに合っていて、何度も(ああ!)と思った。
懐かしいような切ないような余韻に浸りながら帰路についた。