Dial A Ghost 公演情報 Dial A Ghost」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 2.0
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  • 満足度★★

    大人のほうを、向いている?
    子どもの頃に観た演劇は、大人になった今でも覚えているもの。こういう、子どもを対象にした公演は、文化を支えるうえでも大事にしたい、と思う。

    とかいって、僕は、全然、そんなことは考えずに、山崎清介さんの脚本/演出、ということで観に行った。

    子どものための演劇には定評のある山崎さん。演出は、相変わらずスタイリッシュで、いいなぁ、と思う。物語も、案外深刻なものを含んでいて、単純ながら、おとなでも普通に観られる。

    でも、まあ、大人の目線は、関係ないとこ、みちゃうもので……(いや、子どもはきっと、もっと良く見てるんだろうな)。

    ネタバレBOX

    劇団うりんこ、というのは、学校での公演をメインに活動している劇団だそうだ。歴史は長いらしい。すいません、知らなかった。見てみると、結構有名な作家を呼んで、公演を行ったりしている。

    劇は、ふつうに、面白かった。山崎さんの演出で、みんな、メインの役のほかに、黒子と端役を行ったり来たり。移動する舞台装置をめいいっぱい使って、ダイナミックに、シンプルな構成。

    ただ、ちょっと、役者さんたちは、かみ合ってなかったかも。みんな、自分のことに精一杯。山崎さんの演出は、全員のアンサンブルが大切なのに、自分、自分な熱さ。全体が見えていない。最後、主人公が、復讐に燃えて、敵と刺し違えようとする、という、子どもには、少し強烈な場面が。そこで、主人公、まさかの熱演。鬼気迫る殺意を発散させる。最後はハッピーエンドながら、あの、凄惨な殺意だけが、「殺してやる!」の熱演で突出してしまったのは、山崎さんの意図ではないと思う。

    熱い。とにかく、熱いのである。冷静さが、失われている。それには、こんな理由があったのかもしれない。

    チラシに、なんだか、「演劇教育を考える」系のセミナーみたいなのが多数。うむうむ、考えたほうがいい。そんな中に、「うりんこ」の、寄付金を懇願するパンフレットがあった。近年の、少子化や、行政の予算削減で、学校での公演の機会が減って、資金難だそうだ。芸術、文化のために、必死にがんばっているようだ。僕も、助けたい、と思った。のだけれど。

    子どもたちのための、演劇を行うには、大人たちの協力がいる。それは、わかる。でも、そのために、必死に、大人に向かってアピールをしている様子が、少し、ひっかかった。

    舞台が終了すると、役者さんたちが、ダッシュでホールの出口で迎えてくれる。子どもたちに、手を振ったりする。そこに、なにやら、偉げな大人たちが登場。「やあやあ、観たよ」「ああ、先生、ありがとうございます」と、全員、恐縮モード。出口が、ふさがる。みんな、周りが、見えていない。

    子どもたちが、そのわきを、塞いでいる大人たちをくぐるようにして、けげんそうに通り過ぎて行く。手を振ってあげるものはいない。

    子どもたちの方を向くという方法は、意識されていないように思えた。これまでは、それでも良かったかもしれない。しかし、これからの厳しい時代。無理矢理大人に連れて来られた子どもたちが、むしろ、もう一度観たいと思わなかったら、先行きは、暗いと思うのだけれど。

    みんな、必死に、熱く、世の中のためにと思って、やっているのだろう。すごく、よくわかる。でも、そこには、「正しいこと」や「必死さ」への甘えがある。計算ずくの時代を相手にするには、それだと、少し、厳しい。もう少し、冷静さも、必要だ。演技にも、運営にも。

    19時に開演して、終わるのは21時。子どもは、寝る時間なんじゃないかな、と思った(今は、そんなこと、ないのかな?)。

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