エレファント・ソング 公演情報 エレファント・ソング」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.5
1-3件 / 3件中
  • 満足度★★★★

    小さな編成での濃密会話劇、名取事務所の海外戯曲公演は今回で三作目だったか。
    ミステリー要素が強い作品は、思わせ振りな展開の最後に、思わせ振りに見合うオチがしっかり用意されているかどうか、またオチをしっかり含み込んだ(客の関心を惹き付ける狙いに終始しない)人物像の形成が為されているかが、要かと思う。
    今作は惹き付けは十分、人物形象は理事長はOK、青年は頑張っており、看護師は出番が少なく形象の如何を問うまででない、とすると戯曲の(オチの)問題か。
    会話をぶっ通す二人の技に感心しつつも、やはり評価はまずは戯曲、物語に対してだ。

    ネタバレBOX

    精神科の病棟で、青年の担当医師が昨夜から姿を消したらしい。精神科医でもある理事長に、病棟の看護師がこれから面会する青年の事を告げ、彼の言葉に翻弄されぬよう用心した方が良いと進言する。行方不明の医師に最後に面会した件の青年との息の詰まる会話がその直後、青年の登場と同時に始まる。
    青年が強い関心を持つエレファント(象)の話をして回答をお預けにしたり、理事長が医師としての現場を退いた背景を推論して相手の懐に入ったり、ついで自分とのやり取りによって生じた感情を言い当てたりと、確かに医師は青年に小突き回される格好だが、理事長も自分の本分を全うするべく真相追及の意志を相手に投げ続ける。
    さて青年は、医師と特別な関係にあった事を仄めかし始める。証言を拒否しているというよりは、本当の理解を求めていると窺えなくない。会話を楽しんでいるというより、探っている。そうした様子の、真偽のほどについても、観客にはペンディングのままラストへ連れて行かれるのだが、終局、青年は最初からその予定であったかのように自殺を図り、青年への愛情が窺えた看護師の腕の中で、彼女の愛(母親に近い感情)の告白を聞きながら既に瀕死の体で暗転となる。
    この「自死」に行き着く青年の、人生最後の時間としての(と後で判る)理事長との長い会話が、そのような時間としてあったか、そして今遠方にいる医師との関係が、彼の方が死ぬというのだから彼の依存的な愛情(想像だが)に応えられないのは医師の方であり、彼から離れるために遠方に身を置いた、という風な推測ができるが、ならばなぜ彼は死を翌日に延ばしたのか。真相を誰かに言い置いて去りたかった・・?、理屈は判るが青年の立ち方はそうなっていたか(ちょっと評価が厳しいかな)。

    その事以上に、青年にとって医師との関係が「何」であったのか、彼は何を喪った(と感じた)のか。親との関係が影を落としている事が仄めかされるが、頭脳明晰な彼が、もはや出口が無いと絶望するに至った理由、心情が想像しにくい。看護師の証言から彼のナイーブさも仄めかされるが、自死が突発的な事態であり、その事ゆえに理事長は茫然とし(彼は精神科のプロであったはず)、人間の(自分自身の)限界に直面した瞬間であったのか、いや、青年の極めて理性的な自己洞察からの結論があの自殺であり、彼の心の闇が強調されたラストなのか(だとすれば医師との経緯の説明が不十分に思える)。
    そんな疑問が残り、結果、ミステリーとして(娯楽作として)良くできた、という感想に導かれる。物語を完全に飲み込む事は出来なかった。(見落しがあるかも知れないが、、)
    ミステリーのオチとして同性愛を浮上させる狙いだとすると、少し時代が古いのかも知れない。ただ、青年の鋭利な言語感覚は同性愛に相応しく、医師と患者の爛れた関係というより、両者に流れていた精神性の交流を想像させるものがある。もっと踏み込んだ二人の関係の描写があったなら、それが最もオチに相応しかったように思う。
  • 満足度★★★★★

    この舞台を終えて、チラシの図からの意味がわかり、最後まで目の離せない展開はとても面白かったです。佐川さんがとてもいい!!!

  • カナダの三人芝居。フランス演劇界のモリエール賞・二部門にノミネートされた作品だそうです。吉原豊司さんの翻訳を扇田拓也さんが演出されます。上演時間は約1時間40分弱。精神病院が舞台の心理サスペンスでした。
    グザヴィエ・ドラン主演で映画化も。さすがに面白い戯曲でした。

このページのQRコードです。

拡大