ドアの向こうに広がる 公演情報 ドアの向こうに広がる」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 5.0
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  • 満足度★★★★★

    鑑賞日2016/12/18 (日)

    毎度、外部の脚本家を引き込む大名さん。人選でバリエーションを変えられる強みを今回も感じました。見かけ以上の毒を潜ませ、色々考えさせられた前作・お家族から一転、オシャレな大名テイストはそのままに、とても優しいお話に仕上がっていました。

    (以降、続きはネタバレBOXへ)

    ネタバレBOX

    仮想現実の世界に引き篭る設定は、SNS等での人間関係が軽んじられない今の社会にマッチして、勝手に自分を映し出す鏡になっちゃって面白い。
    早々に明らかになっていく2人のカオルの関係と、2人のシンクロする演技とか、描写がいい感じやったな。
    独りよがりな質の追求の末に大切なモノを失ったカオルが「相手の顔を見れていなかった」と後悔するくだりが、色んな現実に投影できて良いわ。
    悪意を持った者が一人も居らず、他人のせいにできないシチュエーションは、絶望に陥るに足る説得力があった。
    魂が幾度となく象徴的に語られるけど、従来パターンの『魂が電脳世界に固着して現実に帰れない』から一歩踏み出て、アバターからも遊離して行方不明になる状況はちょっと斬新。何のかんの、現実と電脳はもはや等価に扱われている雰囲気が印象深い。
    隠し玉の主軸、ノード(アンドロイド?)の扱いが利いている。カオルの「命令、初期化、再起動」という台詞が拒絶の象徴として印象的だったし、魂の有無の話もまた然り。山場の「命令拒絶」は、魂の有無の見解ぞれぞれに寄り添える背景が用意されて上手い。
    引き篭りが、自分でなく、自分の大切な人にこそ深刻な危機をもたらす状況を描いたのに好感。分かっちゃいるけど応えられない「自分のため」という正論に応じるのでなく、自暴自棄も許されぬ、本当に大事な他者への想いに突き動かされる結末には説得力あり。彷徨った魂が戻る仕組みは今ひとつモヤっとしたままだけど、収まるべきところへ収まっていき、尚且つ今の(仮想現実の)関係も大切にしていくエピローグはとても心地よかった。

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