満足度★★★★★
遊女の葛藤、女の矜持
山本周五郎の作風は時代物の中でも活劇で見かける勧善懲悪、ヒーロー的なスカッとした爽快感はなく、庶民の赤裸々な話が多く生々しい風刺もあるのでお芝居をするには表現がとても難しい作品だと思いましたが、今回の巴先生の脚本は台詞に俗語も存分に含まれており分かりやすく、複雑な立場にいる個々の心境も役者さんたちの魂のこもった熱演が伝わる素敵なお芝居でした。
二本立てのどちらも岡場所、遊女といった江戸の風俗を描いていますが厭らしさが全くないので年若い方も抵抗なく観られるのでは?
将監さまの細道→通りゃんせ、という誰もが知っている唄がスパイスになっています。
主役の遊女が辛酸を味わうたびにたびたび口にする、五十年まえ、五十年あと。
人生五十年だなんて幸若舞の敦盛のようだなぁ、と観劇中は思っていましたが中々遠からず、さてさて的外れな予想だったと自覚します。
死ぬことより幸せになることより現状維持を選んだ遊女とその家族の行方が気になるラストです。
ほたる放生→お目当ての役者さんが堂々たる悪役でしたが、こちらも基本的に遊女の有り様VS女の生き様の葛藤を始終、ハラハラしながら見守るという内容。悪役とはいえ美味しい役をイケボに演じていただいた太田さんと、迫力のある長身で息の間合いはさすがの阿部さんの駆け引きも見どころです。
ホタルの短い命と女性の「食べごろ」がやけに生々しかったかな(笑)クリスマスケーキはお早めに…ですね!
どちらも結果だけをみると、女性視点のためか感情移入はしやすく選択肢になんでだー!バカー!となるかもしれませんが、周囲と先見の結論ならしかたないとも思えてきて友人と一日中、論議が出来そうな逸品でした。
ぜひ男性から見た感想が気になるところです。