ビッグマウス症候群 公演情報 ビッグマウス症候群」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.0
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  • 満足度★★★★

    美濃でさらに進化した。
    フルタ丸にとって、劇団員6名のみでの本公演第2弾となる「ビッグマウス症候群」。
    東京・下北沢に続いての、主宰のフルタさんの地元である、美濃(美濃にわか茶屋)での公演。

    フルタ丸としては、以前に1度、60ミニッツプロジェクトとして「フルカラーの夏」を上演しているが本公演ははじめて。当然、不安が沢山あったことだろう。
    美濃で演劇を観るというのは、東京(特に下北沢)で頻繁に観る機会がある自分からしてみれば、かなり稀有な事なのかなとも思うし、そういう意味では、生のステージを100分間、というにはフルタ丸、フルタさんにとって、大きなチャレンジだったと思う。
    会場は専用劇場では無いから、吊り下げ照明も無く逆に自然光が入ってしまい完全暗転が出来ないとか、上手・下手の裏移動が出来ないとか…それでも、それを逆手にとって見事に世界観を再現できてたのはスゴイのひと言。

    勝手な予想として、前半シーンにある各キャラクターの独白シーンは、短くするなど変えてくるのかな?、と想像もしたけれど、基本そのまま。おそらくは、下北沢・美濃で上演する=客層の違いを意識して脚本も演出もしていたんでしょうね。
    それでも、
    ストーリーテラーである三浦先生(篠原さん)の語り口を敢えて客席/観客に向けるなど、試行錯誤はあったよう。分かり易く?言い換えるなら、キャラメルボックス的な感じ…岡内美喜子さんとか思い浮かべてもらうといいかな。

    そうして美濃バージョンを作り上げていった結果、後半部の客席熱は、圧倒的だった。地方が抱える過疎や隣接自治体の合併といった、より身近な内容だったせいもあるとは思うが、巻田(宮内くん)のこれまでと町長選挙出馬への想いが客席全体を包み、彼の演説への共感ヘ繋がったんだろう。
    そして、森田リカ子(真帆さん)のウグイス嬢。美濃での彼女の過去からの吹っ切れ感は突き抜けてた。あれも客席熱との相乗効果だな。

    巻田と三浦先生の関係。
    物語の中では、"中学の同級生"、"医師と患者"という事だけが語られているが、巻田はなぜ最後に三浦先生を旧姓(福本)」で呼んだのか?
    巻田は学生時代、上京する直前かもしれないが、三浦に告白したんだと思う。「東京でトランペットのトップを取るんで、そうしたら迎えに来るよ」のようなプロポーズにも近いような。
    だからこそ、風見町に戻ってきた時に自分をどう見たのかを気にしていたんだろうし、町長選挙への出馬も、今度こそビッグマウスを成功させ彼女とやり直すんだ、という気持ちがあったんでは無いだろうか。。。結果としては、選挙活動を通じ(リカ子の身の上話とかね)自分を育て守り待っていてくれた風見町を守るんだという使命感を持ち、見事に町長になった訳だが。
    三浦先生にしてみれば、父の町長の座を守る、という一念から次なる指導者を摘む事に力を注いでいた訳で、それが無くなってしまって結果、もしかしたら巻田と…なんて想像してしまうエンディングの表情が切なかった。旦那である委員長先生は週の半分居ないしね。ただ、左手薬はそのままだったが。。。

    三浦先生といえば、レミングス:ビッグマウス症候群の患者達に処方される安定剤。レミングスといえば、集団自殺すると言われている(実際は違うという説もあるみたいですが)ネズミ、そして天井からどんどんレミングが落ちてきてただひたすら進むというゲーム。ネーミングがこれらから来ているのであれば、三浦先生との週1回の診察による "暗示"により彼ら・彼女達は大きな口、大きな態度を抑えられていたんじゃないだろうか。あの錠剤自体は、単なるアイコンにしか過ぎないんじゃないか、そう考えると風見町は福本王国を維持するため、約30年近く町民を色々な方法で暗示に掛けていたのでは?とも思えてくる。ある意味、闇を抱えていたのかもしれない。

    最後に、井口(清水くん)について。彼は根っからのギャンブラー気質なんだろう。町のこと住民のこと、全てを調べ上げ賭けの対象にしている様に見える。そうでなければ、巻田と三浦先生との関係(おそらく過去のいきさつや今なお巻田が持っているであろう恋愛感情)や、森田リカ子の子役時代はじめ、あれだけ色んな情報を把握している辻褄が合わない…
    リカ子の女優へのカムバック、彼の恋愛感情も有ったのだろうが、表には出さないが"賭け"だったのかもしれない。巻田を町長にするという大きな賭けが終わった後、次なる標的は何だろうか??

    町長選挙が終わった風見町。
    合併は避けられるだろうが、その先、町にも彼ら・彼女達にも明るい未来だけを感じることは出来ない。
    巻田の気持ちはやっぱり通じないかもしれない、三浦先生は仕事が無くなってしまうかもしれない、刀根は東京へ帰ってしまうかもしれない、リカ子はやっぱり仕事が来ないかもしれない、井口は…元さんは…

    どこか後味が苦い、そんな作品。それがビッグマウス症候群。

    ☆公演全て終了してますので、ネタバレ含めて、こちらで公開してます。

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