ベター・ハーフ 公演情報 ベター・ハーフ」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.0
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  • 満足度★★★★

    微温的な展開から...
    現代若者の恋愛模様が切なくも悲しいように展開される。どうしてもこの脚本「ベター・ハーフ」(鴻上尚史 氏)で公演をしたかったとは、劇団しおむすびの喜田光一氏の言葉。奇しくもこの公演を観た前日(2016.3.10)に日本劇作家協会会長に就任(2016.3.1就任)したことが公表された。

    物語は、インターネット普及により男女の出会いにバリエーションが出来たが、いまだに恋愛に慎重または奥手のような若者が初々しく描かれ微笑ましい。その一方で、マイノリティーに関する社会的問題を絡め、単なる恋愛話にはならない。

    脚本は面白いが、それを体現する演出と演技が追い付いて行かないように思われた。

    ネタバレBOX

    梗概は、出会い系サイトで知り合った女性に自分の写真と称して部下・諏訪祐太(喜田光一サン)の写真を送る沖村嘉治(石川剛サン)、沖村の代わりに女性とのデートに行くことになってしまう諏訪、沖村とインターネットで知り合ったトランスジェンダーの小早川汀(根本理菜サン)、沖村と直接会うことをためらう小早川の代わりにデートに行く小早川の友人・平澤遥香(岡本知里サン)の4人が織り成す恋愛模様を描く。

    舞台セットは簡素であるが、妙に艶かしい雰囲気がある。中央に白いシーツ(スクリーンの代用効果もある)、上手に別空間をイメージさせる台、下手はピアノが置かれている。それらの空間(天井も含め)に赤い紐が巻き、垂れるように掛かる。運命の”赤い糸”を象徴するようで、薄い紗の掛かった物語にリアルな男女の関係が観えてくるようだ。出会った以降の進展は、まだインターネットの普及や携帯電話がない頃、男女の距離を縮めるのに時間が掛かったもどかしさが垣間見えてくるから可笑しい。人と人を介するツールはあっても、実際会って生身の人間同士が理解するのは、時代を経ても同じなのだろうか。その男女関係にスパイスとして効いてくるのが、トランスジェンダーという性の本音。創作された恋愛劇であるからこそ、現実と夢、建前と本音、快楽と時間の流れも自由自在にできる。その面白さを十分に表現しきれていないところが残念であった。

    その第一は、この物語の登場人物は30代半ばという設定であるが、キャストは全員20代前半のようで、社会的経験値が観てとれない。次に時の流れであるが、映写で経過年月を表示するのみ。女性は何度か衣装を変えているが、男性は同じ服装のまま。少なくともネクタイを変える、コートを着(冬場)、上着を脱ぐ(夏場)などの季節感を出し現実味が伝わると良かった。時の流れは、人の気持、感情を左右する大きな要因であり、世相をも表すから。

    それでも若い役者が真摯に取り組んでいる公演ということは感じられる。この恋愛話はトランスジェンダーという点を除けば、誰もが似たり寄ったりするようなものであり、それだけにもっと自分たちの年代に近く、等身大な恋愛に置き換えたら...。色々な場面で効果的に奏でられる音響・ピアノ、歌など魅せる工夫は好感が持てる。その脚本の力と魅せる工夫が、観客(自分)の神経を甘噛みしてくれた。
    今後の期待も込めて★4です。

    次回公演を楽しみにしております。

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