客席は爆笑
シチュエーション・コメディ。客席は喜んで笑っていた。疲れていたせいか、笑えなかった。柄本明さんの芸達者ぶりが光った。わたしにとっては本仮屋ユイカさんを観たかっただけで、結局、それだけだった。
満足度★★★★
台本を生かし切った演者たち
浅利慶太氏は、劇の成功で演出などが力になるのは2割で、基本的には台本の力である、と言っていたような気がする。アラン・エイクボーンによるこの作品は、彼の出世作だったという。とにかく、台本が面白い。演者たちもそう、口をそろえている。柄本明は「この台本をきちんとやることだ」と言っていたそうだ。だが、この舞台が成功しているのは、面白い台本をきちんと生かし切った4人の演者たちの力のたまものだと思う。
主役の藤原竜也は今日、少し声がかれ気味だったように思う。最初はちょっと元気のなさそうな様子もあったが、尻上がりに調子を上げていた。相手役の本仮屋ユイカ。彼女はテレビドラマでもこうした喜劇テイストのドラマに出ていて経験はあると思うが、もはやかわいらしいだけの女優ではない。ごまかしの利かない舞台で、女のしたたかさを十分に発揮していた。
そして何よりもこの舞台を締めたのは、柄本明と浅野ゆう子だ。このベテランの二人の力量によって、若い二人をぐいぐい引っ張っていた。勘違いに勘違いを重ね、ウソを隠そうとまたウソをつき泥沼にはまる。この戯曲の古典的と言っていいおもしろさを、4人は今の時代でも十分笑えるおもしろさとして立派に引き出したと思う。