満足度★★★★★
本当に久々に
赤眼鏡の本公演を観たけど、やっぱり素敵だった。
それは『素晴らしい』というよりは、優しさの物語だ。
物語というのはこのくらいシンプルなほうが良いのかもしれない。
役柄に役者の空気が合っているとなお良い。
不必要な悪役は少ない方が良いのかもしれない。
脇役は分かりやすいが人柄の滲み出るほうが良い。
ちょうどおっちょこちょいなのんびり屋の秘書や目立ちたがり屋だが有能ではないブン屋が脇を固めていた。
主人公は有能だが、心の打たれ弱い参謀。
女性たちは皆タフで折れない心を持っていた。女子高生でさえ(笑
それが男性陣と対比されてとても印象的だった。
男性たちは3人ともパーフェクトからはほど遠かったが、世間一般にいる男性をうまく当て嵌めた類型だった。
女性と比べると男性はわりと分かりやすい存在なのだ。人格的にも。
観客の男性はわりとその誰かに自分を写してみることができるんじゃないかと感じた。
物語は美しいというほど非現実的ではなかったが、リアルと言うほど夢が無いわけではない。
登場人物たちは刹那的というほど目の前しか見えてないわけでもないが、10年先が完全に見通せているわけでもない。だけど見ようとしている。
ようは限りなく普通に近いといって良い。
・・でも、少し違う。
それは人を見分ける力だと思う。例えば男性の秘書。彼は人より意見をまとめるのに少し時間がかかるのだが、決して悪い人間ではない。そうみんな何となく理解できる。そういうことがみんな、ほんの少しだけ、うまい。
ひょっとしたらこれはおとぎ話なのかもしれない。夢なのかもしれない。
こんなうまくいくことってあるのか。
・・でも悪くない夢なんじゃないかと思う。
物語の登場人物は限られている。舞台も。でもその向こうの、目に見えない所までその輪が広がっているんじゃないかと思えたりもする。
それが映画とは違う演劇の力なんじゃないのか。
役者とか制作とか音響とか、みんな含めて観客席を取り囲むことで浮かび上がるものなんじゃないのか?
この劇団の作品を何作か観てきたけど、みんな素晴らしく優しくて良い舞台だった。
美しさだけなら演劇は映画に劣るかもしれない。
でも昔の舞台で受付に座っていたちびっ子が少し大きくなって同じ劇団の解散公演の舞台に出ていたりとか、そういう感慨ってなかなかないと思うんだけどな・・(苦笑