再演を望む
俳優座の「桜の園」を観たばかりであるが、どちらかといえば、栗原小巻のラネーフスカヤ夫人を観てみたい。が、色々と予定が入っており、この日程では到底無理。30年ぶりの「桜の園」とか。これを機に、近々再演してもらえないだろうか。そうすれば、次回は必ず拝見する。
期待度♪♪♪
栗原小巻の再挑戦
栗原小巻がラネフスカヤ夫人を演じるのは、30年ぶりくらいらしい。
解説にもある通り、前回はロシア・モスクワ・タガンカ劇場のアナトーリイ・エーフロスを演出家として招聘し、宮澤俊一の翻訳台本、劇団東演の俳優陣によって、1981年4月に三越劇場で上演されている。当時の栗原小巻は36歳。17歳の娘がいる夫人を演じるにはやや若かった気もするが、今回は逆に年を取りすぎていて、多少の不安はある。東山千栄子の晩年の舞台をビデオで見たことがあるが、いささか鈍重で退屈だった。未だに激しさを失わない栗原小巻なら、大丈夫ではないかとは思うが。
エーフロス演出は、チェーホフ戯曲の悲劇性・喜劇性の両面を鮮やかに描き、好評を博した、と記録にはある。『桜の園』と言えば、これまではどの劇団の公演も、没落する貴族の重苦しい悲しみばかりが強調されていて、名作の誉れはあれども、正直、しょっちゅう観たいと思わせる作品でもなかった(スタニスラフスキーによる本国の初演もそんな感じの舞台だったようだ)。
ところが近年の研究で、本来、チェーホフは、本作を「喜劇」として書いていたことが判明している。個性的なキャラクターたちの右往左往は、「ドタバタ」として描かれたものだったのだ。そういうわけで、チェーホフの意図に基づいて演出される機会も最近は増えてきている。
多分、エーフロスの演出も、最新の解釈に基づいたものだったのだろう。『櫻の園』は現在もなお、進化をし続けている戯曲なのである。今回の加来英治演出が、更にどのような解釈を加えて新しい翼を羽ばたかせてくれるか、期待したいと思う。