背骨パキパキ「回転木馬」 公演情報 背骨パキパキ「回転木馬」」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.0
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  • 満足度★★★★

    別役実書下しは意外にも新境地
    半世紀以上書き続けている戦後演劇の生き証人・別役実の今作は、当日パンフによれば「関係者にはご迷惑をかけた」(別役)代物であり、氏が演出に伝えた所では「今回は随筆です」、つまり一つの舞台としての完成をみるための戯曲は「書き上げられなかった」のであるらしい。だが私にはこいつは秀逸であった。芝居の序盤でこの劇世界の実態(場を支配する秩序)が提示されるが、謎めいた中にも何か納得させられる状況に、そういう自分に、おかしくて笑えてしまう。リリオムという主人公の「超課題」を冒頭で見せると、あとはどうにでも。彼を照射軸として諸々、自由闊達に場面が展開する。ここで吐かれる一杯の言葉が、なるほど別役氏の(戯曲以外の)文章から来ている事は文体から容易に判るのだが、演劇的緊張はそれによって緩む事なく言葉は濃密に紡がれて行く。話題は変遷し、ガクンと膝が折れるような挿入もあるが、この「語られる場」としてある舞台空間が、愛おしく感じられる。氏の指定の懐かしい歌謡(や童謡)が演者によって唱われるのも、これに大きく貢献している。お話とは直接関連が無いが、進行する話題との微妙な距離感で挿入される具合も、場面の自由闊達度を可能にしている俳優たちの不思議ちゃん的佇まいもよい。

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