満足度★★★★★
評価が難しい
演劇の評価は非常に難しい。基準が他の表現より複層化しているからだ。
作品を客観的に評価しろ(って、そもそも「客観って何だよ」という話だが)と言われたら、✩3。
ただ、桜井大造氏の演技は凄かった。「特権的肉体」ってやっぱあるんだなと感じられた。台詞を凌駕する身体、その存在感。
また、障害によるものか演技なのかわからないけれど、舌足らずの役者さんの演技もとてもよかった(名前がわかりません、失礼)。
劇団に抱いていたイメージから、もっとプロパガンダっぽいメッセージ性なのかなと思っていたが、シュールレアリスム的作風なので、メッセージを押し付けられるという感じはしなかった。むしろ、こういうテーマで作品を作り続けていることに敬意を持った。
ラストの「屋台崩し」は、他のテント劇団もそうだが、もともと劇をカタルシスにさせない為の演出だったはずなのに、今や観客にカタルシスを与えるための演出になってしまっている。
その転倒は原理的・本質的には良いのかかなり疑問だが、
観劇体験としては、カタルシスとして素晴らしいというしかない。
しかも、そのラストで登場人物全員が舞台の前面に出てきて、歌を全力で歌うのだが、この古典的すぎる演出も、それを本気でやられると、やっぱり感動してしまう。特に還暦近い(を越えた?)役者にそれをやられると(上手い下手ではなく、とにかく全力でやるという姿勢を見せられると)、それは凄まじい説得力を持つ。
結果、終わりよければ全て良しという感じで、良い気持ちで帰路についたが、それも一つのカタルシスでしかないことを考えると、前衛がカタルシスでいいのかという強い疑問ももってしまう。
作品内でテーマにされていた内容(問題提起)に関しては、それほど私の心には残っていないので。
観方によっては✩3だし、良かった点を見れば✩5だし、
間をとって✩4でもいいけれど、、、
長年の活動にも敬意を評し✩5。
大熊ワタル氏を中心とする「野戦の月楽団」の音楽もとても良かったし。