満足度★★★★★
2014年,『葉っぱのフレディ:いのちの旅』を,初めて観た。
2014年,『葉っぱのフレディ:いのちの旅』を,初めて観た。東京公演では,すでに,4回観劇している。
私は,子どもの演劇・ミュージカルでは,どうしてもミュージカルの方が具合良くできていると思うことが多い。ストレート・プレイは,すごく難しくなる。その点で,音楽や,ダンスが十分に取り入れられたものは,とても楽しい。
『葉っぱのフレディ』は,元小児科医のルーク先生が,地球の起源から説き起こす壮大な物語だ。だから,最初は少し違和感がある。しかし,たとえとしては,ふだんは何気なく見落としている「葉っぱ」にも,生命があり,物語があるという重要なメッセージが隠されている。
どうして,「葉っぱ」なのだろう。植物は,何もしていないように見えても,フレッシュな空気を生産してくれる。夏の間は,木陰を作ってくれるという役目だけでなく,実際緑が多くある地域は,熱帯夜などになりにくい効果もある。また,神様のいたずらかもしれないが,紅葉の時期には,考えられないスケールの自然美で,人のこころをなぐさめてくれるだろう。
『葉っぱのフレディ』を初めて見て,最初の方は,少し退屈だった。単なる中学・高校の理科の授業的にも感じたからだ。しかし,自然の中にも弱肉強食は起こるというシーンが始まると一変する。葉っぱたちが,カミキリ虫たちに食べられそうになり,風がそれを微妙に邪魔し,やがて,巨大な毒グモが現れて,カミキリ虫たちが駆逐されていく。この場面が,名場面だと思う。音楽がかなりドラマチックで,毒グモメフィストは,『オペラ座の怪人』的雰囲気をもって,舞台を盛り上げていく。
少し弱点をいうと,メアリーは,もう少し悲劇的に演出できないものか,ということがある。彼女は,どういう事情で,母子家庭になったかわからない。しかし,最後は,その母親との酷い死別が,あっさりとし過ぎている。どのように手を加えていくと,それが出来るか,わからないが,何かあると思うのだ。
マークと,クリスの話も,全体が非常に格調高く仕上がっているのに比べて,やや手抜きにも思えた。子ども相手だから,あれで良いのだろうか。たとえば,三角関係の場面でも,加えて,それを越えて,もう一度本当のものに近づくことができた。といった設定が必要かと思う。
『葉っぱのフレディ』の,いのちの提示は,本当のところは,さほど深いところにはない。ルーク先生は,死ぬことがさほど怖くなくなった,満ち足りた気持ちである,という。しかし,そのような気持ちになるのは,やや説得力が弱い。ミュージカルは,ストレート・プレイほど,深い思想などを伝えるものではないので,無理をいってはいけないことも承知ではあるが。
子どもたちに,地球環境を守っていかないと,自分たちの未来がない!日がやがて来てしまうかもしれないよ,という重要なメッセージ。それから,子どもであっても,成人しないうちに病気で亡くなることもあるし,命というものを意識するにはまだ早い時期とはいえ,「死」というものの存在くらい漠然と認識しておいてほしい,というもう一つの重要なメッセージ。これらは,上手に表現されていたと,絶賛したい。
一時間40分は,適切な時間だと思う。これ以上長くなると,冗長になる。プロは,ルーク先生役の,宝田明さんだけだ。子どもたちのための,子どもたちによる,ミュージカルという点では,ずば抜けて魅力的だと思う。良くできた作品にちがいない。