エル・スール ~わが心の博多、そして西鉄ライオンズ~ 公演情報 エル・スール ~わが心の博多、そして西鉄ライオンズ~」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 5.0
1-3件 / 3件中
  • 満足度★★★★★

    潮騒が聞こえる・・
    殆ど5人の役者であの空間を埋めたのはお見事!

    舞台美術とSE、そしてあの演出に時折、劇団桟敷童子の舞台を想起しながら、ベタともいえるノスタルジーの世界観を思いのほか堪能した。

  • 満足度★★★★★

    人情話と思いきや、、、 (追記しました)
    所謂「演劇」らしい「演劇」。それも人情もの。
    始まった瞬間、苦手なタイプの作品に来てしまったと思った。
    そういう作品は観ていてこっちが恥ずかしくなるからだ。

    だが、観ている内にどんどん惹き込まれていった。
    何度も目頭が熱くなった。
    観終わった後も、瞼が潤み続けていた。

    と言っても、作品のスタイルは最後まで変わらない。
    つまり、そのスタイルがあまり好きではない者をも納得させるだけの強度のある作品だったということだ。
    (裏を返せば、人情ものが好きな人には文句なくお薦めできる。)

    役者さんの演技がとても良かった。全員良かった。

    作・演出は東憲司氏。間違いない作・演出。素晴らしい。

    <ネタバレにの最後にヒロポンについて追記しました。>
    追記を書いて思い直すと、この作品は、表面上人情話に見えるけれども、実は反人情話なんじゃないかとさえ思えてくるから不思議だ。

    ネタバレBOX

    何と言っても役者さんが良かった。
    特に「タカオ」役のたかお鷹さん。(役名も本名と重なっている)
    たかおさんが老人役で登場し、昔を回想し、話がスタートする。
    66歳のたかおさんが、そのまま少年の役を続ける。
    最初、無理があるんじゃないかと思いながら見ていたが、
    そのうち少年にしか見えなくなる。凄い演技力だと思った。

    他の演者も皆素晴らしかった。

    「ヒロコ」役を演じた岩井七世さんの溌剌とした存在感もとても印象に残った。

    内容としても、売春婦や朝鮮人、長屋に住む人たちという差別される者や底辺を生きる者が、その現実をひっくり返す夢を、西鉄ライオンズに託しながら生きているという話。
    その視点の在り方はさすが東氏、素晴らしかった。
    人情話と言っても、現実の過酷さは突きつけられる。キレイゴトではいかない。

    ヒロシは売春婦ユカリに、彼女のことを思ってこそ、売春をやめて欲しいと乞い。苦しい職業の鬱屈を晴らすためにやっているヒロポンも止めて欲しいと乞う。ユカリは、自分の為にも、ヒロシの想いに答える為にも、その現実から何度も抜け出そうと試みる。その時に彼女を励ます力になったのが、西鉄ライオンズの姿でもあった。だが、結局、他の仕事を見つけても、直ぐにクビになってしまう。その辛さからも、そして中毒性からも、ヒロポンも止められない。その彼女の姿にヒロシは幻滅してしまう。そして、西鉄ライオンズにも希望を持てなくなってしまう。
    最終的には、売春防止法の施行もあり、彼女は博多を離れ、元に暮らしていた土地で仕事を見つけ生きていくということになった。西鉄ライオンズのような逆転劇を期待して。だが、その後結局どうなったのかは、作品では明かされない。
    おそらく、西鉄ライオンズのように輝かしい逆転劇は現実には起らなかったのではないか、、、(この点は観客に委ねられている)。

    ラストシーンで、今までの回想が終わり、少年「キヨシ」は老人に戻り、舞台には当時の野球中継の映像が投影される。それを、(おそらく記憶の中の)他の登場人物たちが、若い姿のまま嬉々として応援している。
    だが、年老いた「キヨシ」だけは、笑顔ではない。
    その意味深なラストも素晴らしかった。

    この終わりは、
    人情もののキレイゴトではないということが暗に意味されているということだろうか、、、、わからない。少なくとも私にはそう見えた。

    <追記:2014年8月16日>
    売春婦ユカリが現実の過酷さから目を逸らすために覚醒剤ヒロポンを使っていたことの意味は、殊の外大きいように思う。ヒロポンは戦時中に戦闘における不安を払拭するために軍内で広く使われていた。敗戦とともに軍で不要になったものが民間に流れた。それが戦後のヒロポン流行だ。つまり、そこには明確な歴史の転位があり、不幸のリレーがある。それも現実から目を逸らすための手段としての薬物。西鉄ライオンズに希望の夢を見るのは現実から目を逸らすのではなく、現実と対峙するために必要なものとして、ヒロポンと対比して描かれているとするのがこの作品の普通の見方だろう。だが穿った見方をすれば、西鉄ライオンズへの希望もまたヒロポンと同じなのではないかという解釈もできる。いずれによせ、この作品においてヒロポンが背負っている意味は、単なる覚醒剤という意味よりも遥かに大きい。
  • 満足度★★★★★

    大切なもの
    初日を観ました。桟敷童子の東憲司さんとベテラン俳優さんとの息がぴったりでした。今の時代に失われていた人の温もり、匂いが舞台上から体感することが出来ました。まるで映画を観ているスピード感、俳優たちの情感が1時間40分間絶えることなく伝わってきました。装置、音楽、照明含めて、このお盆休みに素敵なプレゼントを貰った一日でした。

このページのQRコードです。

拡大