桜の森の満開の下 公演情報 桜の森の満開の下」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 3.5
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  • 満足度★★★★

    二人芝居
    役者やのう、と言った感じでした。

    ネタバレBOX

    黒子がもう既に満開の桜なのにさらに花びらを取り付け、桜の木の脇の仄かな光を放つ灯明を下手前面と上手前面に移動させる、こんな行為を長々と行い、本編でも男役を演じて言葉を発する、それはもう黒子ではありません。黒子の格好をして特徴を隠しただけの山賊であり、要するに一人芝居の形式と言うよりは鬼と山賊の二人芝居と言った方がより正確だと思いました。

    都へ行こうとする件と桜の木のところを通る件が錯綜したような印象は確かにありました。ちょっと間が長いなと感じるところもありました。客席から女性の美しい声で台詞が発せられ、それに続き、山のこだまに呼応するかのような女優さんの台詞回しは素晴らしく、三人芝居かと思ってしまうくらいでした。

    舞台挨拶で恐縮されていましたが、本編中は何があっても態度に表さないこと、男優さんも台詞や動きを合わせていたことで、そういう演出かと思ってしまうほどの出来でした。

    リンを叩いたような音楽は法要のような厳かさがあり素敵でした。
  • 満足度★★★

    俳優も客も人間
    語り手たる俳優に黒子と楽師、その他には舞台上に誰もいない、実質的な一人芝居。

    一人芝居は演者をも観客をも緊張させ、場を極限まで張りつめさせ、そこではちょっとした破綻が命取りとなるが、俳優も観客も人間、俳優も時には過ち、客は客で生理活動に伴う物音は立てざるをえず、完全無欠に劇が運ぶことはかなわなかった。

    一人芝居の難しさを痛感した次第。

    ネタバレBOX

    岸田理生が舞台用にまとめ直した安吾作の話を、俳優の千賀さんは随所で動きを交えながら時に声色まで変えて抑揚たっぷりに語り、黒子は彼女を適切に補佐、楽師は妖しく深遠な音色を放つ和製打楽器の数々で演じ手を盛り立てていたが、こうして舞台化されることであの捉えどころのない小説がストンと腑に落ちるのではないかという密やかな私の期待は結果かなうことはなかった。


    それはネタバレ外に記したことが原因ではなく、ひとえに原作小説それ自体が持つ説明不足によるものだろう。


    だからといって、過剰な加筆により話を合理化しようものなら原作小説の醍醐味である謎めきが失せてしまう。


    ならば、山賊、その妻、そして女中にそれぞれ役者をあてがうストレートプレイ仕立てにし、妻が興じる“首のままごと”のくだりをはじめ小説で視覚的に描かれている場面を美術家と道具方が腕をふるって極力リアルに表現していたならどうなっていただろう、少しは“腑に落ちた”だろうかと、そんな興味が湧いた。

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