満足度★★★
地味ながら味わい深い作品
学生の為の公演を金曜日の夜という社会人が見ることの出来る時間に上演する企画で、解説も演目も分かり易い内容で楽しめました。
『歌舞伎のみかた』
中村虎之介さんの司会で演技のスタイルや舞台の作りを30分程で解説し、コンパクトながら分かり易かったです。
本編の『ぢいさんばあさん』が地味な作品なので、『伽羅先代萩』『髪結新三』『加賀見山旧錦絵』の中の動きのあるシーンを実演して、歌舞伎の華やかな部分も見せていました。黒御簾の手前の壁を取り外して、普段は見えない囃子方の様子を見れたのが良かったです。
『ぢいさんばあさん』
若い夫婦が夫が犯してしまった罪で長年会うことが出来ず、37年振りに再会するという物語で新しい作品で様式的な要素が少なく、歌舞伎というより時代劇みたいな趣きですが、言葉が分かり易く夫婦愛というテーマも普遍的で、予備知識が無くても楽しめる内容でした。
若さと老い、男と女を対称的に描くプロットの運び方に、古典とは異なる近代的なドラマツルギーが感じられました。
中村橋之助さん演じる夫と中村扇雀さん演じる妻のおしどり夫婦ぶりがチャーミングで、若い時代の夫の軽妙さや年老いてからの妻の優しげな貫禄に味わいがあり魅力的でした。
若手が演じた甥っ子夫婦の演技が硬くてぎこちなかったのが残念でした。