満足度★★★★★
想定外の迫力、予想を上回る面白さ!
言わずと知れた法廷劇の名作。仙台座も出演の役者さんたちも初見だった。東京公演を含む各地の巡演で広島公演は唯一ワンステージのみ。実は、こんなに凄い芝居だとは予想していなかった。
ホール舞台上の上手側と下手側に向かい合うように観客席を設え、舞台中央に陪審室のテーブルとパイプ椅子。迫真の密室劇が目の前で繰り広げられる。
三谷幸喜の翻案「12人の優しい日本人」の映画も含めて、たくさんの「12人の怒れる男」を観た。結果は知っていてもハラハラさせられる。仙台座の舞台にはさらに新たな発見があった。
ひとりひとりの役者さんがすごくカッコいい。最初に無罪を唱えた陪審員8号(映画でヘンリーフォンダが演じた)の樋渡宏嗣、最後まで有罪を譲らなかった高圧的な陪審員3号の渡部ギュウ。周囲のメンバーを巻き込んだ彼の弁舌が、終幕で冷やかに拒絶される鮮やかな展開。
民主的なルールは、決して有能なリーダーによって実現されるものではなく、自分たちが悩みながら見つけ出していくものらしい。
圧倒的に優勢な有罪論に異が唱えられたとき、勇気をもって支持を表明するのが人生経験の豊かな老人の陪審員9号(渡辺貢)や社会の中の弱者であるユダヤ移民の陪審員11号(原西忠佑)やスラム出身の陪審員5号(横山真)あったことに、社会には多様な価値観が必要なのだと思った。自分に一番近いのは、口先ばかりで周りの言動に左右されやすく有罪・無罪・有罪とくるくる意見を変えた陪審員2号(西塔亜利夫)かも。男優ばかりの芝居だが、この芝居を束ねたのが女性演出家だというのも凄い。
進んでるなあ、仙台!