満足度★★★★★
■ちょっと。
■ちょっと、首をかしげた。わからない。見終わってから、きょとんとした。不可思議な感触だけが、たしかに残る。いったいなんなのだろうか。
人間の本音がぶつかりあう。しかし、結局のところ、本人にも、わからないまま。いろいろと考えさせられる。しかし、結局、わからない、観客も。
人間は、ちょっと愛情をもち、ちょっといじわるで、ちょっとどうしようもなくて、ちょっと死にたくはない。――そういう現実を最小限度の道具立てで、延々と見せる。思想劇なのではあるが、怒号の応報が入り込んでいたりして体当たりの群像劇でもある。
手だけの演技をして姿をあらわさない役者の謎。最も動かない状況のなかで、死を超えて生きつづける人間の真実を最後にアピールしているようで、衝撃的であった!
橋本七瀬の軽妙かつ重厚な演技の転換の連続に、観客の心は右往左往させられる。二日一達哉の慟哭は心の奥底からの叫びとして会場全体を切り裂く凶器でもあった。小山さくらの演技は、実際にありそうな状況をリアルに表現していて、その迫力は見事きわまりなかった。最後まで姿をあらわさず、キャスト表にも名前がない「謎の登場人物」の名演技としての死体役は感動的であった。あのような演技もあるのか、と心の底からの快哉がこみあげた!