久保田万太郎 「弥太五郎源七」「一周忌」 公演情報 久保田万太郎 「弥太五郎源七」「一周忌」」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 5.0
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  • 拓くのは、「観客力の時代」






    「観客力の時代」とは どういったことを意味するのだろうか。


    タレント・高田純次氏は週刊誌の連載上、映画観賞後の会話で多用される「難しかたったね」について、「便利だと思う。自分がバカだということを隠す」と分析している。

    その通りである。

    作品に対する技術的評価、世界観をめぐる批評が あれば、たとえ多摩美大卒業展のようなカオス集でも「難しいかったね」の一言では済まない。




    本舞台は二部構成と なっており、前半に『弥太五郎源七』を、後半に『一周忌』を 上演するのだが、休憩中に観客からは「下向いてて 聞こえづらいのよ」「マイクがほしい」「時間が長すぎるわ!」なる批判が続出した。


    演劇の「中身」を批評するのなら好ましい。
    ただ、役者の台詞を理解したければ補聴器を付けるべきだし、大切なのは上演時間ではなく、「平坦で つまらなかった」という「中身」だろう。



    二部『一周忌』は、関東大震災後の昭和3年7月の東京・浅草で、未亡人となった女性(瀬戸 摩純)、保険勧誘にやってきたセールスマン(仲 恭司)を中心に展開される。


    「新派」のアンチテーゼとして、新たな舞台様式である「ストリートプレイ」「現代演劇」「プロレタリアート演劇」は生誕した わけだが、それだけに、「純化した新派」を観劇するのは新鮮だった。


    長台詞は、役者との「関係性」ではなく、むしろ「文学」であった。文字が記され、初めて「舞台様式」が成立する。


    といっても、未亡人の女性が「着付」する場面は、成人式しか葬式くらいしか着物をまとわなくなった日本女性からすると、これは「学習タイム」だろう。
    「新派」に存立価値があるとすれば、後世へ伝える「文化様式」に違いない。


    戦前の日本を あれこれ言うつもりはないが、服装はファッション・センスがあった。
    黒スーツを全員が着こなす企業社会もよい。しかし、茶系だとか、麻系だとか、紺だとか、灰色だとか、戦前の日本企業社会は もう少しオリジナリティが あったと思う。
    「UNIQLO」の画一期とは対極である。


    私は封建文化を強く叩いてきたが、「色彩文化」こそクール・ジャパンに位置付ける中心だと思っている。














  • 満足度★★★★★

    年に一回
    しみじみ浸ります。

    ネタバレBOX

    『弥太五郎源七』  57歳弥太五郎源七、ちっちぇー野郎だぜ。

    しょぼんと自宅で座っているシーンが延々と続き、それでもそれが様になっているのが大したもんでした。

    若い新三にいいようにあしらわれ、以後顔役としての権威も地に落ちたことを恨みに思い新三を殺害。帰りに寄った居酒屋で亭主夫婦に返り血を見られたことで夫婦も殺害。この時点でも堅気に手を出す小さい男だと思いましたが、弥太五郎の犯行との噂が広まり、子分からの自訴の勧めに納得したはずなのに、捕吏が来ると逃走しようとしてしまうちっちぇー野郎でした。

    『一周忌』  若くて美人の後家さんは誰も放っておかないということでした。

    夫が亡くなって丁度一年、未亡人の許へ保険屋さんが来て雑談をしているところからスタート。関東大震災の数年後も今も、保険屋さんはしつこいものです。

    肉付きも良くなり肌ツヤも良くなった後家さんのところへは、お姉さんの旦那を始めとして下心の有無に関わらず男どもは集まり、また再婚話もこれからたくさん来ることでしょう。

    35分ほどの短編でしたが、お寺へお参りに行くために着物を着替えるシーンがあり、話をしながらやり慣れたように帯を締めたりするのも大変なことだと思いました。
  • 「一周忌」が 好み
    みつわ会 久しぶりですが 三度めの観劇になります

    新派には 全く詳しくありませんが ちょっとした所作の美しさ、静ひつな舞台空間は、ならではのものと思います。久保田万太郎の戯曲をテキストに忠実に、というシリーズですが、現代劇に慣れてしまった身には、どうも冗漫に聞こえてしまう

    「弥太五郎~」は 有名な髪結い新三の外伝のひとつらしいです。盛りを過ぎた渡世人の弥太五郎親分の「したこと」が軸になっている戯曲ですが、終始「おもっくるしくていけねえ」感じが。同じストーリーでも今の小劇団ならもっと立体的に創るだろうと

    一方、「一周忌」のほうは、からりとした爽やかな短編です

    以上、好みだけで申し上げまして失礼しました

    ネタバレBOX

    一周忌 のなかで

    藝妓出身の若い未亡人が夏の浴衣から 絽の着物に着替えるくだり
    その優雅な色気に見とれました その着付けをさりげなく助ける姐さんもまた

    あのシーンが あの短編の華ではないでしょうか
    まだまだ女性にとって制約の多い時代、でも未亡人としての悲しみより 抑圧から解放された女性の静かな門出さえ暗示させる


    あの 帯を解く音、すう…とした力みのない立ち姿の美しさ、あれが新派の女優さんの格なのだと思いました

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