満足度★★★
2つが1つに融合
マザーコンプレックスが詩的な妄想として展開する物語で、今までのロロの作風とは異なるテイストが新鮮でした。
高校生が国語のテストの問題文として堀辰雄の『鼠』を読むという形でテクストが扱われ、『鼠』の物語と、先生に誘惑されるマザコン少年の物語が平行して展開しました。
前半は安直なエロの表現に滑り気味な印象がありましたが、テストの選択肢のアイウエオ→母音→ボイン→おっぱい→母とイメージが繋がって行き、『鼠』の話と少年の物語、少年と母、台詞とギターが一つに融合する終盤の展開が圧巻で、セクシュアルな意味とは異なる官能性に引き込まれました。
三浦さんは有名なポップスを歌詞の内容や時代感まで含めて用いる手法が特徴的ですが、今回は空間現代の野口さんによる感傷性の無いソリッドなギターの生演奏が台詞と対等の音として扱われていました。
その結果、台詞は聞き取りにくくなっていましたが、母を求める切迫感が強く伝わって来ました。
少年と母が一つになる様を、2人が台詞を一文字単位で変拍子的なリズムで交互に言うことで表現していたのが素晴らしかったです。
他の登場人物の台詞を字幕で表すシーンはわざわざ映像を用いる必然性が感じられず、話の流れを停滞させていると思いました。