日付のないカレンダー 公演情報 日付のないカレンダー」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.0
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  • 満足度★★★★

    Aエンドの感想です。
    今回、私は1回のみの観劇だったのでAエンドしか観れなかったのですが、Cエンドを観劇した友人に感想を聞く機会がありました。
    わりと早い段階で友人は『ループもの』とわかったと感想に書いてたのですが、
    私は『ループもの』と判断するのに時間がかかりました。
    劇中で登場人物が気づく描写が入るまで『回想シーンを積み重ねる』演出かもしれない。どっち???みたいな


    結果、ループだったわけですが、この辺は白紙の状態で観る人の方が素直に観れるのかな?って気もしました。
    今回のお芝居は時間軸も時間の経過どおりだったので、かなり観やすかった気がします。
    舞台では先にとあるシーンを見せて、その後でそのシーンの根拠になるシーンを入れる…みたいな演出も多いので、観慣れないとわかりにくい気がするので。
    なので、今回の作品は難解さもあるけど、わかりやすいお芝居だったように思います。

    以下、ちょっことだけ友人の感想を書き記しておきます。
    あ、友人は普段は観劇をしない方です。
    (諸事情により私の手元に余りチケットがあったので観劇しに行ってもらったのです)

    アニメだと、ループはフィルムを使いまわして節約をする。
    演劇の凄いところは、尺を調整したり、見せたい部分の表現を強めてく。

    凄いと感じるのが凄いと思ってしまった私です。
    私は冒頭のループ箇所ではあまりにも今までの作風と違って笑いの要素がどこにもないので、なんだかよくわからない心配にかられてしまっていたのでした。
    だって、前の作品なんて幽霊と結婚するとか大真面目に言ってたわけですよ。

    でも、シーンを積み重ねるごとに、笑いのなさにゾクゾクしました。
    同じ人が、これを描くんだ。あの人が、これを描くんだって。

    ネタバレBOX

    登場人物は5人、ざっくりと設定を書くなら

    ・何かトラウマを抱えてるであろう、平凡な男←主人公
    ・物語を書いているであろう男
    ・研究に携わっているであろう男
    ・過去に何かやらかしてるであろう男(元犯罪者)
    ・幼児退行しているであろう主人公の兄

    の5人です。
    あと、『アリス』と呼ばれているカナリア。

    見ようによっては、緩やかに時間の流れる幸福な空間。
    起きて、挨拶をして、一緒に朝食をとりながら、他愛もない話をする。
    ただ、『おはよう』って言ったばかりのはずなのに、『おやすみ』と全員が退室して行く。
    「あれ?」って感じの3回のループ。
    おかしい事に気づいてしまった主人公。ハッキリさせよう、ハッキリさせようと足掻く。

    『今日って、5日ですよね?』

    その台詞が何度も繰り返される。少しづつ変化の加えられていくシーンの繰り返しの中で。
    多分、『5日』は『いつか』なんでしょう。

    1時間40分の上演時間の中で曖昧にされている部分は多々あります。
    でも、それは舞台の上で登場人物のぶつかり合いを描くには不要な部分なんでしょう。

    戦争がおこって、シェルターに避難している。
    戦争がおこってるらしいことさえ伝われば、その戦争に関する情報はいらないわけです。
    逆にその情報を入れてしまうとリアリティを殺してしまう気がします。その辺は観た人の想像の想定でかまわない。

    人と人とのぶつかり合い、なんだと思います。

    どちらが正しいか。

    「俺とあいつとどちらが正しい!!??」

    終盤近くの激しいシーンで、主人公は問われます。

    「どちらも正しいです」

    押し殺すように主人公は答えます。

    「それでいい」

    激しく主人公を問い詰めた男は、そう答えます。

    自分は悪くない。
    でも、相手も悪くない。
    それは、わかってるんですよね。
    でも、ぶつかるしかない。

    『自分の家族が大事』

    何度もその台詞が出てきます。

    自分の家族が大事。
    誰かの家族を傷つけることになっても、自分の家族を守りたい。
    誰かの家族を傷つけたいわけじゃない。でも、自分の家族を守りたい。

    それは仕方ないよねって、他愛もない話のひとつとしての会話がありました。
    でも、実際にそういうシーンになってしまうと、痛々しくて、たまらない。
    ああ、こういうことなんだよね。みたいな。

    1人の男には奥さんがいました。アリスという名前の。
    6人で一緒に過ごしていました。
    だけど、今は5人の男だけで過ごしています。

    引き離されたくない、一緒にいるんだ。男は叫びました。
    それは、その男にとっては当たり前のことです。だって、アリスはその男の家族ですから。

    でも、他の男たちにとってはアリスの存在は自分の家族を危険にさらすものでした。
    だから、男をアリスと引き離しました。それも、当たり前のことです。

    だけど、そのために男は狂ってしまいました。
    自分の家族を守ろうとした男は、どちらも狂ってしまったのです。

    狂うことによって、バランスを保っていた。
    なのに、狂っていることに気づいてしまった。

    狂ったままでいた方がいいのではないか、
    狂ったままではいけないのではないか、

    ぶつかって、ぶつかって、繰り返します。

    もしかしたら、戦争は終わってるかもしれない。
    もう狂わなくてもいいのかもしれない。

    シェルターの扉を開けるか開けないかで男たちはぶつかります。
    もしかしたら、『扉を開けない』という選択肢も存在したのかもしれません。

    私が観た回のラストは(今回のお芝居のラストは4パターンです)

    主人公は扉を開けます。

    扉の外には何もありませんでした。アリスさんもいませんでした。
    (アリスは隣の女性用のシェルターにいると劇中では説明されていますが、それが真実かどうかは描かれていません)

    主人公は絶望します。
    扉を開ければ、希望があるかもしれない。でも、開けてみたら、そこにあるのは何もない世界。

    男たちは再び薬を飲みはじめます。
    再び狂って、他愛もない日々の繰り返しに戻るために。
    繰り返し続けてるうちに、なんとかなるかもしれない。
    でも、なんとかならなければ、食料も尽きて、その時が死ぬ時だ。

    主人公は絶望して、致死量の薬を飲んでしまいます(……と思われます)
    主人公はその場で眠りにつきます。(多分、死んでると思われます)

    そして、外から扉を叩く音が鳴り響きます。

    ……で、幕です。

    ヤムアキさんが観た回はびっくりするほどのハッピーエンドだったらしいです。
    もう本当、私の観た回は救いゼロですよ!!!!
    でも、その分、カーテンコールでの笑顔を観たりすると役者さん凄い!!怖い!!!とか思ってしまうわけです。
    しかも、私の観た回はアフタートークがあって(ヤムアキさんの回はお見送り会でした)そりゃあまあ、なごやかだったわけです。
    お誕生日のお祝いしたり、裏話したり、もうその落差が凄いわけです。

    笑いの要素が全然ないかもしれないと思ったと書きましたが、終盤で笑えたシーンはありました。
    そこで、ああ西永さんの作品だ。とか、思ってしまったわけです。

    「人間も鳥みたいに飛べたらいいのにな」
    「人間も人間にしか出来ないことが出来たらいいのにな」
    「人間は、笑える」
    「笑うと、どうなるの?」
    「笑えば、幸せになれる」

    きびしめのシーンの中に挟まれた、一連の平和なほっこりするやりとり。
    だけど、ぶつかってしまう。

    「笑ってよ!!」
    「人間になってよ!!」

    異常な環境の中で、人間じゃなくなってしまう。
    そんな、ぶつかり合いの物語でした。
    多分、文章じゃ伝わりません。
    重要なのはお話の内容ではないから(と書くとかなり語弊がありますが)

    感情と感情が、ぶつかる。
    それを観て、感情を揺さぶられる。
    誰に感情移入するかも人によって全然違うでしょう。きっと、その人の状況によっても感じ方は違う。

    舞台は
    演出家と役者の勝負であり、
    役者と役者の勝負であり、
    役者と観客の勝負であり、
    ……なんだと思います。ぶつかりあって生まれてくもの。

    「演劇は風に書いた文字である」

    鴻上尚史さんの名言です。
    劇場に来て、実際に観劇してみないと、どうしても伝わらない。
    劇場に来ないと伝わらないんです。

    でも、劇場に来れば、伝わる。
    舞台の上にいる人達が伝えてくれる人達なら。
    演出家さんが舞台の上にいる人達に伝えてくれる人なら。

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