満足度★★★
ふぞろいのアップルプ・フィクション
様々な映像のマッシュアップとシンクロして演技が行われる、脱力感が心地良い作品でした。
ツール・ド・フランスが初めて開催された年と日比谷公園が開園した年が同じ(1903年)という事から、日比谷公園周辺で起きるエピソードと様々なフランス映画のワンシーンが、映画『パルプ・フィクション』のストーリーを骨格にして重ね合わされて描かれていました。
『シェルブールの雨傘』、『女は女である』、『死刑台のエレベーター』、『ふぞろいの林檎たち』、『犬神家の一族』といったドラマや映画、さらにツール・ド・フランスの記録映像やニュース番組、バラエティー番組が、台詞やストーリーや物を媒介にして巧みに繋げ合わされていて見事でした。
しかし、役者達のかなりラフな演技によってその労作が報われていないという状況が面白かったです。
雑然と置かれた椅子や脚立、壁に歪んだ形に映し出された映像、ツール・ド・フランスの選手やキャビン・アテンダントに似せた衣装、クラフトワークやユナイテッド・フューチャー・オーガニゼイションの楽曲といった各要素のざっくりとした存在感が印象的でした。
今までの作品に比べて洗練された構成になっていたものの、ビートに乗せたラップや、社会や演劇界に対しての毒が少なくなっていて、開き直った感じが弱まった様に思えて残念でした。