期待度♪♪♪♪
シスカンパニーとは
やがて,『夢の遊眠社』には,マネージメント部門ができた。これが,映放商会 という意味で,「えーほーしょう会」である。北村明子(元女優)が登場する。 『夢の遊眠社』は,1992年,17年の歴史に幕が降りた。野田秀樹は,一年 間イギリスに留学をし,戻ると,演劇企画制作会社である「野田地図(NODA MAP)」を始める。「野田地図(NODA MAP)」は,その後のプロデュース公演のさきがけとなる団体 である。ワークショップは,役者の体験型講座ともいえるが,ここで出演者が決 まっていくことが多い。
北村は,「野田地図(NODA MAP)」の経営を担当する会 社として,別に「シスカンパニー」を設立する。「シスカンパニー」は,情報戦略システムを重視した。そのため「SYS」という会 社名となった。北村は,この会社の前身である「えーほーしょう会」を立ち上げ るときは,野田に,マネージャー(営業担当者)とデスク(事務専従者)を置く べきと言っている。「えーほーしょう会」は,シスカンになって,社員は15名 になる。だが,部や課は存在しない。
野田が留学を終え,ロンドンから帰国後,「シスカンパニー」は,野田作品以外 の「プロデュース公演」を多く企画していくことになる。北村は,むしろいろい ろなことをやってみたいと,野田と話し合う。2008年1月に,「シスカンパ ニー」は,野田作品から手を引くことになる。23年間続いた,野田とのパート ナーシップはこうして解消された。
北村にとって,「プレゼン」は何か。お芝居と本質は同じだと,いう。演劇など に興味もない人間に,「企画書」は無力である。「プレゼン」で,書かれた言葉 に命を吹き込み,言葉をリレーさせる・・・。さらに,「シスカンパニー」にお いては,マネージャーは役者のクオリティや価値を守るためにのみ活動すべきで, 無用な人脈は持たない方がいいし,役者とも少し距離を置くべきと言っている。
「制作」者は,配役を決める。演出家を選定する。劇場をおさえる。公演回数を決 める。観客を上手に集めたい。だが,作者・作品を最初に選ぶとき,ある意味哲 学者・社会学者にならなければならないため,「制作」者には高い見識が求めら れるだろう。又,演劇というものは,集団行為なので,文豪や,画伯のように, 個人で達成・到達される世界ではない。
役者こそ,主役で,演出家は脇役で,「制作」はさらに周辺の出来事かもしれな い。しかしながら,「自分の魂と向き合えるような作品」に,役者をあわせたい。 そこで,その役をすっかり自分のものにしてほしい。長期的には,そのひとに, ながく役者でいてほしい。所詮,頭の中に残っているものは,やがて消えていく が,その儚い世界に「制作」はある。
参考文献:だから演劇は面白い:北村明子(小学館)2009