冒した者 公演情報 冒した者」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 3.2
1-4件 / 4件中
  • 満足度★★★★

    昔の戯曲とは思えないほど“今”だった
    戯曲を読んだ時には気づかなかったことがわかったり、今の自分に引き寄せて考えることがあまりに多く、観ている時間=考えている時間という、演劇としてとても豊かな体験でした。松田龍平さんが素晴らしかった。

  • 満足度★★★★

    濃密な芝居を小劇場で。重く暗い人間の葛藤なのに、不思議と華やかな印象が残った。
    戦後の東京郊外、焼け残った大屋敷に9名の人間が集い、
    平穏な日常を送っていたある日のこと。
    一人の人間の来訪によって狂い始める日常。

    人生経験が希薄な自分として、舞台上の日常は
    まるで金田一耕助もので連続殺人が起きる金持屋敷のよう。
    田中哲司の長セリフから始まり、
    松田龍平の静かな狂気の存在感、
    中村まことは去勢に満ちた人物が一気にもろく人格が崩壊、
    松雪泰子は、きっぷが良く見えたもののやはり急変する。
    個性波、実力派の俳優さんたちが
    吉祥寺の小劇場の舞台に集まり、
    とても濃厚な人間の葛藤を演じる
    なんという贅沢な時間と空間だったでしょうか。
    暗く重い内容であるにもかかわらず、楽しい内容でもないのに
    とても華やかな印象が残った不思議な感覚のまま劇場を後にしました。

  • 満足度★★★★

    三好十郎の最後の到達点
    三好十郎という劇作家は、今ではあまり記憶されることのない
    作家のように思えますが、その心血を注いだ、裏表のない
    言葉の数々は、何十年経っても変わることなく人を打つ威力が
    あると思います。長塚氏は、その圧倒的事実を、巧みに観せて
    くれました。心から感謝します。

    ネタバレBOX

    手元にある片島紀男『三好十郎傅 悲しい火だるま』(五月
    書房)によると、「現在の時期というものと、この日本という
    場の真ん中に生きている私という実感から直接的に生まれた」
    ものが、本作『冒した者』であり、この作品は、三好の最後の
    長編戯曲となります。

    この作品は、数年前に、青空文庫で読んだんですよね。その
    時は、それまでにない、サスペンスに近い作風に、まったく
    相変わらずの熱い独白が延々続くスタイルにしびれて、この
    作品、舞台化ならないか、とは思ってたんですが、限りなく
    小説に近づいてしまっていて、舞台転換などが難しい、と
    感じ、ちょっと諦めてたところがあります。

    それだけに、長塚圭史氏が演出、上演を手がけると聞いて
    感動しましたよ、本当にね。

    『冒した者』は、戦争の記憶そう遠くない、朝鮮戦争の時期、
    そして日本の再軍備が近づき、またの戦争が始まるのでは、
    という気配の中で書かれた作品です。

    なので、世相を反映して、敗戦と共に力を失った軍人や
    政治家が再び徒党を組んできな臭い動きを見せたり、左翼
    マルキズムに根ざした反体制平和運動に屋敷の住人の一人が
    加担していたり、時代の混乱がまんま出ています。

    戦時を引きずったかのような時局をよそに、屋敷といわれる
    三階建て、塔付きの奇妙な設計の屋敷に居住する9人の
    住人は、表面的には平穏で平和な日常を過ごしつつも、
    危ういバランスの中、お互いを牽制し合っているようにもみえます。

    そんな中、最近恋人との心中に失敗し、その両親や近所の魚屋を
    殺して逃げてきた須永という青年が屋敷をひょいと訪れたことで
    その均衡が一気に醜く崩壊していく…という話。

    闖入者である須永は…ひとことでいうと、「死に魅入られた、死
    そのもの」ですね。時代精神に押し潰され、恋人を失い、夢遊の
    中で人を殺してしまった彼は、その時点で生者との接点を失い、
    まるでゾンビのようにただ徘徊する存在になってしまったのです。

    面白いのは、戦争をくぐり抜けて生き延びてきた、タフな屋敷の
    住人達が、須永の存在になすすべもなく、自身の本質をさらけて
    いくところ。その存在に過度に思い入れたり、恐れたり、そして
    意味づけしてみたり。

    そうすることで、須永という、自分達とは異質な、いや、異質と
    思いたいけど、実は近しい存在をなんとか理解しようとして
    みるけど、途中から、須永が生きているのか、屋敷の住人が
    生きているのか、それともみんな死んでいるのか、よく
    分からなくなってきます。その辺が、闇を巧みに用いた
    ライティングなどの演出によって、うまい具合に浮き彫りに
    されていきます。じわじわ得体の知れないものに侵食されるよう。

    場面展開なども、以前の『アンチクロックワイズ・ワンダー
    ランド』や『荒野に立つ』のように、シームレスにつないで
    いく手法を用いて、ああ、うまいな、と。

    この作品、60年位前の作品なんですけど、同時代性があり過ぎて
    ちょっと怖いです。何が起こるか分からない不透明な世相に、
    動機がはっきりしない殺人事件、現在と同じく時代の圧力で
    圧迫されながら生きる意味を失い、死人と近しくなっていく
    人々(特に若者)、人を死に導く原爆(現在では原発)の存在…。

    三好十郎が、おそらく自身を仮託している「私」の言葉では
    「YESでもNOでもない、第三の道がきっとある」
    「自分を圧迫するピストンの存在に苦悩しつつ、立ち向かい、
    再び生の実感を取り戻そう」
    という言葉が、そんな中で、とりわけ印象に残りました。

    役者では、証券屋を演じた中村まことの啖呵と、理知的だけど
    得体の知れない医師を演じる長塚圭史の不気味さ、茫洋として
    つかみどころのない青年、須永の役である松田龍平が印象に
    残りましたが、皆、良かったです。
  • 満足度

    私にはわかりませんでした。
    古い作品だったんですね。
    予備知識なく、すごい出演者陣だなぁという興味だけで行ってしまいました。

    大失敗。。。

    ネタバレBOX

    こんなにすごい出演者陣なのに、3時間ひたすら眠かっただけ。
    私には、何も届かず、何も入ってきませんでした。。。

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