LOVE,LOVE,LOVE 公演情報 LOVE,LOVE,LOVE」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 5.0
1-2件 / 2件中
  • 満足度★★★★★

    歪だけど、リアル
    全くどんな芝居か、内容を知らずに観に行ったので、ある意味衝撃的でした。

    この芝居の主役の、ケネスとサンドラの思考形態や、価値観には、あまり共感は覚えませんが、それでも、これはイギリスの多くの家庭で、実際に起こりえる事象を丁寧に、転写表現した作品だという実感はありました。

    大家さんの舞台は、数えきれない程観ていますが、今回の作品ほど、彼が魅力ある役者さんだということを認識させられた経験はかつてなかったと思います。
    松熊さんは、以前から、上手な女優さんだなと注目していましたが、今回のサンドラ役の身を呈した乗り移りぶりは、快挙的な素晴らしさでした。
    ジェイミー役の前田さん、お若いのに、先輩俳優の間で、実に繊細な役どころを無理なく演じていらして、驚きました。昔観た映画で、少年時代のブラッド・ピットが、自閉症の少年を好演していましたが、それを彷彿とさせる秀逸な演技でした。
    安藤さんは、養成所時代から既に完成した演技力を有していましたが、青年座団員になられてしばらくは、才気が先走ってしまう、過剰演技が、彼女の良さを隠してしまう懸念を感じたのですが、今回のローズ役では、自然に近い演技の見事さに息を呑みました。安藤さんの女優としての躍進に期待が持てると、少なからず御縁があった人間として、嬉しくなりました。
    嶋田さんは、少し前までは、役を深く考え過ぎて、役に演技を封じ込められるような迷いを感じる役者さんでしたが、柔軟性ある演技をものになさったようで、今回のヘンリー役、こちらまで、感情移入してしまうリアルさがありました。

    創立当時から、新劇嫌いな父が唯一、目を掛けていた劇団が、旗揚げメンバーが次々と他界された後も、力を失うことなく、新しい才能や風を積極的に受け入れて、健在どころか、益々、価値ある劇団に進化している様を拝見し、個人的にも、万感胸に迫るものがありました。

    ネタバレBOX

    作劇と、演出の妙が利いている、素敵な舞台構成でした。

    マリファナを吸うことに何も罪悪感を感じない、サンドラの思考回路は、日本でしか生活したことのない自分には、想像してみることもできないくらい、違和感だらけで、何も共感できないのですが、でも、イギリスという国の一般的家庭をリアルに再現している芝居なのではという、深さは、素直に感じられる作品でした。

    私としては、こんな身勝手な親に育てられた、ローズとジェイミーが気の毒に思えてならないけれど…。
  • 満足度★★★★★

    こんなもん
    若い人に観せたら暴動起きまっせ!!

    ネタバレBOX

    1967年に自由に生きると息巻いた世代も時が経って親になれば保守的になり、1990年、子どもの世代からは古臭いと言われる、所謂昔は良かったとか、今の若者はとか言った世代間ギャップのストーリー展開を予想していたのですが、全く異なっていました。

    英国社会における世代間格差、世代間闘争、世代間戦争のようなものを強烈に描いた話でした。

    1948年頃に生まれたビートルズ世代の彼らはとことん自由に生き、そして成功しました。2012年、2013年現在、彼らの子どもの世代はワーキングプア的ですが、そんなことには一切お構いなしで、これから優雅な老後を謳歌しようと考えています。

    特に現在40歳近い長女などはバイオリニストになったものの、アルバイトで食いつないでいる有り様で、家を買ってほしいと親にねだったところ、優雅な老後を暮らすための資金を他に回すことを嫌った64歳の親から、自己責任だと言われて断られてしまいます。終いには、家を売って世界旅行でもしようかと言い出す始末。

    うわあ強烈。英国のベビーブーマー世代の個性、考え方がここまでとは思いもしませんでした。もう笑うしかありません。

    日本でも同様のことが言えますが、私が考えるに、団塊の世代よりも少し上の70過ぎぐらいの人たちが高度経済成長の恩恵を一番受けて裕福なのだと思います。そんな彼らは団塊の世代の人たちも巻き込んで、投票率の高さからも分かるように政治を利用して既得権益を守っています。

    デフレ下でも年金支給額を減らせない政治、このお芝居を若い人たちに観てもらい、世代間戦争のことを知り、積極的に政治に参加しなければ戦争には勝てないことを理解してほしいと思いました。

    もうビックリの秀作でした!

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