追熟しない果実 公演情報 「追熟しない果実」の観てきた!クチコミ一覧

★ 満足度の平均 ★ ★ ★ ★ ★ 4.5
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  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    横山拓也氏の新作は、名取事務所への書き下ろしという事で久々に観に出かけた。(最後に観た横山作品はトラムで観た枝元萌主役の山暮らしの話だったか・・と、ちょっと調べた所がその上演のあった2023年秋の年明け2024年2月に「う蝕」なる作品を観ていた。これはちょうど能登震災の直後であったから、まだ二年半。しかし随分昔観た感覚だ。)
    いずれにしても注目は我が(とまで言うか)名取事務所に、ある意味中庸な作家に見える横山氏がどんな話を持ち込むのか・・であった。俳優陣は見て思い出した松本紀保、西尾友樹、枝元萌に、名取事務所の常連(又は所属)の面々の達者振りと、これは後で確認した演出・西本由香による所も大であろうが、この作品、「食堂」という人情喜劇が展開しそうな舞台と台詞劇の導入から、幾つもの社会テーマを内包する重層的な芝居にぐぐっと舵を切って行く。それ故という事でもあるだろう厳しい対立の場面も突如現われる。個を巧く描く横山氏の筆致が、個の向こうに広がる普遍的問題群へと手を届かせる。排外主義にそういう切り口から言及させるとは・・。それぞれ、居そうな人物たち、欠点も含めて人間を描く横山氏、今回はさすがと思った。好み。

    ネタバレBOX

    全く余談だが・・「う蝕」で当時をありありと思い出したので。。

    能登地震に対する政府の冷たさと言ったら無かった。国会議員の現地入りを「道路事情」を理由に制限しておきながら、その後の道路事情の詳報は一切なかった。あれで現地入りを控えたNPOやボランティアも多かったはずだ。
    私は国会議員による殆ど犯罪に近い行状だったと思っている。(一時的な状況をその後もずっと続くものと想定した訳だが、その事がもたらすメリットと同時に弊害にも考えが及ばなかったのか・・否、目的は現地のためでなく別にあったから、「道路事情につき現地入りを控えよ」という一回切りの勧告を、そのままずっと適用させた、不作為の罪だ。

    あれによって国会議員は面倒な仕事を「しない」事が免罪され、逆に行った議員が加害者呼ばわりされた。
    いやいや。一律に皆が皆「行かない」事で得られるものは何か? 横並びで誰かが突出しない、という事が重要なのは、それが「売名行為」となる場合だろう。つまり、彼らにとっては被災地入りというのは必要に迫られての行動ではなく、政治家としてのアピールだ、そんな事のために現地入りは今回は控えましょう・・そういう目的で被災地入りをするような国会議員に対する釘差しだった訳だ。
    だが、「全員が行かない」事と、「僅かな数名が行く」事との間に、道路事情の点での弊害の度合いとして、どの程度のものがあるか。
    ほとんど開きがない。
    一方、選抜された僅かな人間が「実際に現地を視察する」事のメリットは、とてつもなく大きい。これは数学の応用問題でもあり、普通に考えれば分かる事だが、これが「横並び」主義の教育を益々強く受けて来た日本人の非合理的思考であり、日本の停滞をもたらすほぼ元凶に等しいと私には思える。

    現地入りする事による面倒は、住民らの要望に直面しなきゃならないこと、だろう。具体的な措置のため「予定外の」予算を組む必要が出て来る。防衛費予算をどう割こうかとそっちばかり気にしていたら、余計な情報は持ち込みたくない事だろう。冷たい。いかにも冷たい。
    そして日本の凋落の原因を思わされたのもこれ。仮に「行った議員」の行動が百歩譲って「悪かった」として、しかしそこで得た情報そのものは有益なはずである。だが、不当な手段で得たものは汚れているので用いるべきではない・・とでも言いたいのか、リアルな証言や中央に居ては気づけない具体的な指摘にも関わらず、「売名行為」ゆえ、証言が真実かどうか判らないとでも言うように、取り合わなかった。
    情報の価値を測る基準も持たず、組織の都合上どう扱うのが「得か」ばかりを考えている空気感。
    「専門職らによって適切に対応させて頂いている」・・この具体性の無さ。
    「行かない事をそしられない」ための免罪符を、一般国民も自らに適用し、「行った人間を叩く」事が被災者のため等といった勘違いも甚だしい自己免罪人種があの時は増殖していた。
    悲しい日本の私。
  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    まず、この役者7人の並び!面白い。
    舞台は食堂、店終いするつもりの老婆のところに甥夫婦が転がり込んでくる。それも傍目にはかなり強引に。本人達に自覚ないのが肝。この地域には野生の猿の外来種繁殖問題が深刻で、二重三重の意味で多文化共生のテーマが伝わってきた。最適解を客に委ね、作品がより身近なものになった。
    老婆役の竹下景子さん、ドンピシャにハマっていて共感できた。地域住民の3人もうまい。そして、外来種系の親子3人の強烈なふるまいと言ったら!現実そのものではないか。
    西本さん演出にしては笑いが多めで良かった。それにしても、うまい役者さんの掛け合わせ、見事でした。

    ネタバレBOX

    猿の保護、殺処分。メリットデメリット(人間側のですが)どちらもウーン…となり、それが地元民の主張も微妙に意見が分かれ、更によそ者がよかれと思って争いの傷口を広げてしまう。渦中にいると見えないものを丁寧に見せてくれたと思う。
    議員の奈央さんの個性がやや強引過ぎたと感じたが、それはあくまで自分の好みの問題かな。
  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    ネタバレ

    ネタバレBOX

    名取事務所の『追熟しない果実』

    戯曲はiaku・横山拓也

    あらすじ:
     山奥の集落に住む律子は、亡夫と営んだ食堂に住みながら、ひとり年金暮らしだ。律子を親のように慕う村民議員の奈央は、律子を気に掛けながらも、日本猿と台湾猿が交雑種した事により、村民が被害を被っている事に頭を抱えている。
     そこに大阪から律子の甥っ子夫婦がやってきて、食堂をカフェにしようと強引に立て直しを図ろうとするが、計画性の見えない提案に、「乗っ取りでは?」と村民から疑いをかけられてしまったのである…。

    感想:
     地方の人口減少問題に、特定外来生物問題と外国人問題を重ね合わせていく。甥っ子は外国人ではないが、静かに暮らしている村民からみたら騒がしい外国人と同じだ。
     子供の頃から外国人との接点がなく、生活を脅かされてしまえば憎しみすら感じてしまい、拒否してしまうのは致し方ない。
    とはいえ同じ人間同士、避けてはいけない問題だと認識しながらも、一定の期間をおいて、自身で追熟出来るかどうかではないか?という問題提案が見えてくる。外国人問題と特定外来生物問題が、ぴったりと重なり合う瞬間でもあるのだ。
     甥っ子夫婦を演じた西尾友樹と枝元萌の大阪人役に「これでは受け入れられないよ」と思えてしまうほど上手く、嫌悪感を感じてしまったのはいうまでもない。彼らの上手さによって、テーマが染み込んでくるのだ。
     横山拓也の戯曲、俳優の西尾友樹が目当てだったが、なかなかの良作であった。
  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    鑑賞日2026/10/03 (土) 14:00

    座席1階

    iakuの横山拓也の新作書き下ろしということで、期待してでかけた。田舎町の親戚を頼って逃げてきた親子の配役の妙もあり、横山作品らしい味のある軽快な会話劇に仕上がっている。共生という理念を目指しながらも、マイクロアグレッションという微妙な差別意識なども浮き彫りにする物語は、社会派劇ファンをうならせる出来栄えだ。
     
     舞台は、登山客目当ての商売で細々と繋いできた人口流出に悩む田舎町。亡き夫が開いた喫茶店がある家に残された女性は、店を閉めるかどうか揺れていた。この山では日本猿と台湾猿の交雑で生まれたサルの保護活動をしている町議らのNPOがあり、喫茶店の女性はこの町議と親子のような支え合いを続けてきた。そこに突然登場した、大阪に住む亡夫の甥一家。強烈な関西弁でずけずけものをいう姿に、町議の女性は母のように慕う喫茶店の女性を奪われるのではないかと反発する。

    さすが関西出身、横山作品の大阪人や大阪弁の描写には味わいがある。それを見事にこなしたのが枝元萌だ。悪気はないが笑いと突っ込みで事を丸めようとするところはなかなかおもしろい。亡くなった店主の妻を演じた竹下景子も存在感たっぷりだった。

    保護対象の交雑種が地元農家の野菜を食い荒らしたり、人を襲ったりする状況は昨今のクマ騒動に通じるところがあって、保護か殺処分かという論争も他人事ではない。さらに、街にやってきた大阪の一家が抱える事情が後半で明らかになるが、その社会的な問題などはかなりリアリティーがある。

    横山作品の魅力はこうした様々な社会的テーマを織りなした群像劇、会話劇だと思っている。その点で、今作は横山作品の中では注目すべき面白さだし、客席の期待に応えた秀逸な舞台であると言っていい。見ないと損するかも。

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