青空…! NEW VERSION 公演情報 青空…! NEW VERSION」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.0
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  • 満足度★★★★

    深い意味はありやなしや、、、
    東憲司さんの作・演出ということで期待していたが、物語は平板だった。
    (と、表面的には思ったが、深読みしようとすると、、、  ネタバレの最後に書きます)
    だが、そこは東さん、その完成度はさすがという感じ。
    新妻聖子さんの演技もよかった。

    ネタバレBOX

    主人公は数か月前まで小学校の教師だったが、ある事件をきっかけに学校を辞めることになり、今は亡き祖母が数年前まで暮らしていた田舎の家(防空壕)で生活することを決める。そこには、祖母の霊がいたというところから物語は始まる。

    小学校で起こった事件とは、自分の小さい頃に似ていると可愛がっていた生徒が突然登校拒否になり、「先生から暴力をふるわれ、もう学校に来るなと言われた」と証言したということだ。これにより、他の生徒や保護者・先生から様々な批判を受け、辞職に追い込まれた。

    だが、物語が進むにつれ、実はこの話は、主人公の作った嘘であり、実際には、本当にその生徒に手をあげ、「もう学校に来るな」とも言ったのだとわかる。
    そもそもの原因は、生徒皆で朝顔の種を植えたが、その生徒の鉢だけから芽が出なくて、その生徒も苦しんでいたため、主人公である先生が良かれと思って、お店で朝顔の苗を買ってきて植えてしまったことで、その生徒が怒ってしまい、それに対して、主人公がとった行動が、手をあげたことと、「もう学校に来るな」という言葉だった。

    理由があるにせよ、やってはいけないこと。その理由も、生徒のことを想っての行為ではない。

    後に、その生徒は、「自分が嘘をついていた。先生に手もあげられていなければ、学校に来るなとも言われていない」と証言し、学校にも登校するようになったそうだ。

    そのことを伝え聞いた主人公は、
    子供の気持ちに心を打たれたのかどうか、その辺の理由ははっきりと確定できないが、いずれにせよ、自分の今までついてきた嘘を認め、それと同時に、今まで対話し続けていた祖母の幽霊も、実は自分が勝手に作り出した幻想だったと(観客に、または自分自身に)認める。

    自分を守るために、本当は加害者だったにも拘わらず、自分は被害者だと自己洗脳をしていたことになる。

    祖母の霊のことも、自分の都合のよいように作り出していた。

    それらの自分勝手な幻想を振り切って、現実に向かって強く生きていこう物語。


    <ここからは、極めて自分勝手な曲解>

    この話の設定が、防空壕の中での話であり、祖母が戦争のことを語ることなどを考慮すると、
    主人公が自分を守るために、自分の過去を隠蔽し、自分に都合のいいように思い込もうとしたことというのは、先の戦争での庶民の在り方への批評になっているのではないか。
    真珠湾攻撃で太平洋戦争が始まった際などは、ほんの一部の人を除いて、ほとんどの人は諸手を挙げて喝采した。インテリなども含めて。
    それが、戦後になったら、「だまされていた」「やりたくもない戦争をやらされた」という意見に変わった。明らかに虚偽である。記憶のすり替えである。
    戦時下で「やりたくない」と思いだした人も後半には増えるが、それは身内などが徴兵で兵隊とられる苦しみを実感したからであったり、B29が飛んでくるようになり、日本がもはや銃後ではなくなって、さらに食べるものも本当に底をついてからのことだ。実際に悲劇や苦痛が家族や自分自身に降りかかってくるまでは、戦争万歳であった。
    にもかかわらず、戦後には「だまされた」とほとんどの人が言った。

    そのことを映画監督の伊丹万作は1946年8月号の「映画春秋」に「戦争責任者の問題」という文章を書き、騙される者の責任を痛烈に批判した。自身の戦時中の在り方も含めて。

    <「だまされていた」といって平気でいられる国民なら、おそらく今後も何度でもだまされるだろう。いや、現在でもすでに別のうそによってだまされ始めているにちがいないのである。>
    この伊丹の言葉は、今現在でも、まったく古びていない。

    曲解すれば、『青空・・・!』が問うているのはこの問題なのではないか、、、

    歴史を自分の都合のよいように思い込む歴史修正主義への批評として。
    戦争の被害者であったと同時に、加害者でもあったことを忘れつつある戦後日本の民衆への批評として。

    そして、それは今現在へと返ってくる。
    今の政治の流れでの中で、憲法が変わり、国防軍などができたとしても、
    私たちはもはや「だまされた」とは言えない。
    選挙できちんと支持した結果が今の政権なのだから。


    まぁ、上記のことは私の曲解かもしれないが(これこそが作品を自分勝手に歪めて捉えているという矛盾)、
    いずれにせよ、過去を自分の都合のよいように解釈して、過去からも、そして現在からも眼をそむけるのではなく、きちんと過去と向き合うことで、現在とも向き合える。そうして初めて青空が見いだせるということをこの作品が問うているということは確かだろう。

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