くっきり分かれた「風格」と「軽妙」
東西の「風格」と「軽妙」が二つに くっきり分かれた、そんな落語でした。
笑福亭鶴瓶 師匠の「軽妙」は言うまでもないでしょう。
桂 春団治 師匠のピンチヒッターとして観客の前に現れた鶴瓶師匠は、「神妙」な面持ちでした。
「電話もらって、すぐ代わりに出ることができるって、落語の世界くらいですよね」
そして、鶴瓶師匠が「下手ですね」と桂春之輔師匠(落語協会幹事長)の「浄瑠璃」にコメントしたことから始まった、祝宴会の辞任騒動の話を交えたのです。
今回、降板された桂春団治師匠の一門のトップである桂 春之輔師匠に確認の電話を入れた際、上記の件についても話せたそう。
「一度辞める、言ってみたかっただけ、って…」
会場は笑いに包まれました。
春団治 師匠の健康が回復されるのを祈るばかりですが、経緯についても「笑い」を織り込む その「軽妙さ」は やはり鶴瓶師匠です。
本題の「鶴瓶版 かんしゃく」は、師匠(鶴瓶師匠は弟子にあたる)の話す身振り手振りが圧巻だったと思います。
顔を真っ赤にする姿は「血潮」の文字を彷彿させます。
熱湯をかぶってしまった師匠の様子、「オロナミンCどこや!」と慌てふためく「かんしゃく」ぶりは腹の底から笑えるシーン。
一方で、短い爆笑エピソードを連発しながらも、師匠の心の温かさが伝わる人情噺でした。
「落語」という域を越えた、愛弟子の鶴瓶師匠しか演じることのできない噺だったといえます。
中入りを挟んだ後の古今亭志ん輔 師匠「居残り佐平次」も、負けていません。
枕の部分で、「女性が大好きです」と“女好き ”を自任した志ん輔 師匠。
おそらく世間公認のレベルです。
遊郭の世界を語らせて 師匠を上回る噺家は いないでしょう。
場所は吉原より徒歩2時間ほどの品川宿。
遊郭で「居残り」を続ける佐平次という男の物語です。
江戸の臭い、灯り、畳の表面などが、師匠の噺を聴いていると目の前に拡がっていきます。
今回のシチュエーションは 遊郭なので、障子、行燈、畳の密閉された室内だと思います。
夜露の中の「活気ある賑わい」江戸。
巧みな喋りの佐平次を見事に演じ、「居残り」の緊迫感を笑いに変えてしまうマジック。
なんと「絶妙」なのでしょうか。
どこを切り取っても、志ん輔師匠の落語は江戸町民の金太郎飴でした。
そして、終始、漂っていたのは「風格」です。
改めて、桂春団治 師匠の健康が回復されるよう、祈っております。
「春団治」だけに、「治り」も早い はず ですから。
満足度★★★★★
取っ手もよかった!(笑)
前座から志ん輔師匠まですべてよかった!春団じ師匠も聞きたかったがかわりに鶴瓶師匠が出演でびっくり。まくらのイタリア「取って」の話、よかったです。