百年~風の仲間たち 公演情報 百年~風の仲間たち」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.0
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  • 満足度★★★★

    百年節!
    100年経てば山河も変わる…

    ネタバレBOX

    日韓併合から100年の2010年の大阪、かつて猪飼野(イカイノ)と呼ばれていたところが舞台。風まかせ人まかせに集う在日の人たちの話。

    帰還事業で、あちらの暮らしが良かったら万年筆で、悪かったら鉛筆で手紙を出すという話は決死の覚悟で夢に乗っかった事情が良く現れているエピソードでした。

    100年といえば親子三代ですが、在日関西人と言ってパワフルな彼ら、次の100年でどう変化するのでしょう。
  • 満足度★★★★

    今の社会にこそ問う作品
    ネット右翼が声高に叫び、嫌韓デモなどの排外主義・民族差別が大手を振って行われている今の社会状況に、この作品が問いかける意味は大きい。

    在日を巡る、極めて複雑な状況が描かれている。

    特定の立場からの政治イデオロギーを喧伝するような作品ではないので、多くの人に観てほしい内容。

    ただ、演劇的には、ドラマツルギーよりも、在日問題をめぐる情報の提示の方がまさっている印象があり、そういう意味では絶賛はできない。
    それでも、そういう問題に普段関心のない人にとっては、その情報自体がひとつのドラマだと感じられるかもしれない。実際、事実に基づいた物語なので、強い話ではある。

    ラストは本当に素晴らしかった。
    ラストの大団円のためにそれまでの芝居があるという印象。

    ネタバレBOX

    演歌は、韓国併合(韓国の植民地化)によって、文化の融合的なものが生じた結果の産物であるというような内容から始まる。
    (この点は詳しく知らない情報だったので、とても興味深かった。)

    そこから、様々な在日を巡る複雑な問題が描かれる。

    例えば、名称の問題。
    在日コリアン、在日韓国人、在日朝鮮人、在日韓国・朝鮮人、、、、など。
    コリアンは英語だから使いたくないという意見や、韓国人と呼ぶ場合北朝鮮籍の人はどうなるんだという意見、韓国は国名であり、朝鮮は民族名であるから、韓国朝鮮人という言い方はおかしいなど、、、名称ひとつとっても、極めて難しい問題である。作品では触れられなかったが、韓国・朝鮮人という名称に対して、文学者の金石範は、間にある「・」こそが38度線を、分断を、意味するためにその名称は使いたくないという。
    では、何と呼んだら良いのか、、、(この文章では便宜的に〈在日〉と記す)
    この作品では、大阪の猪飼野が舞台のため、「在日関西人」「在日大阪人」という呼称がいいという話になる。

    また、済州島の4・3事件についても語られる。長らく韓国政府によって隠されてきた虐殺事件。韓国では長らくタブーだったため、在日の作家である金石範さんの『火山島』によって公に知られるようなっていった事件だ。(金石範さん自身は実際の体験者ではないため、その著書は聞いた話を基にしたフィクション。)

    さらに、韓国が軍事独裁政権だった時代に、自分のアイデンティティを求めて韓国に渡ったが、韓国でも「半チョッパリ(半分日本人)」と蔑まれ、更には、軍に捉えられ、北朝鮮のスパイではないかという疑惑のもとに、ひどい拷問を受けたという人物も出てくる。(小説家・李良枝さんのことや、徐勝さんのことなどが重なる。)

    北朝鮮への帰還事業についても触れられる。当初は、多くの在日は(日本人のインテリも)北朝鮮こそが正義だと思って疑わなかった。だが、今や、北朝鮮と韓国の立場が逆転している。そのような問題も提起される。

    朝鮮戦争についても触れられている。日本の戦後復興は、朝鮮戦争に軍需物資を供給する朝鮮特需によってその端緒が開かれたのであるが、その特需に乗らないと生きていけない在日の姿。鉄クズを拾って生活を立てていた者は、その鉄クズが、同胞を殺す武器に変わるということをわかっていても、それを辞めるわけにはいかない。(当時は、その問題で、在日同士で大きな対立があったそうだ。)

    また、国籍の問題。韓国籍、北朝鮮籍、日本籍(日本人に帰化)の問題。

    在日は、のんきに生きている日本人とは比べ物にならない大きなものを背負って生きている。その100年の葛藤を、様々な角度から示すために、どうしてもあれもこれも詰め込まざるを得なかったのだろう。ある意味では、仕方がないことであるし、作家の自意識とは違う部分での欲望だと思うので、批判的に述べるのは気が引けるが、それでも、やはり舞台としては詰め込み過ぎで、ドラマとしての面白さには欠けたと言わざるをえない。在日問題の幕の内弁当。入門書を読んだという印象。

    そうは言っても、様々な差別や社会状況に翻弄されながらも、強く生き抜く在日猪飼野人(在日関西人、在日大阪人)の姿はやはり感動的だ。

    ラストの歌による大団円は本当に素晴らしかった。
    ラストシーンのためにそれまでの芝居があったように感じる。

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