ガソリンホットコーラ 公演情報 ガソリンホットコーラ」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 3.0
1-3件 / 3件中
  • 満足度★★★

    不条理?シュール?
    不条理なような、シュールなような、、、
    物語はありつつも、その物語が様々に切断される。
    ある切断面は、また別の切断面へ接続され、
    観客の想像力の中で、様々に広がる。

    ネタバレBOX

    細部でも、極めて哲学的であったり、批評的であったりするような台詞が発せられるが、それが物語に回収されることはなく、その思想的な台詞は宙吊りにされている。それを観客の想像力の中で紡いでいくことで、作品は完成するということだろう。
    観た人の数だけ、この作品の意味は開かれている。

    この点を、多様な解釈を生む作品として評価するとするか、
    落としどころのない、意味不明な作品とするかで評価は分かれるのではないか。

    演出も面白い部分がたくさんあったし、私はそもそもきっちりした物語よりも、物語が解体されている作品の方が好みであるのだが、
    この作品においては、理由はわからないが、引き込まれなかった。
    何かが物足りなく感じた。
    私の場合は、物語や落としどころが欲しかったわけでは全くないのだが。
  • 満足度★★★

    似て非なるもの。
    ガソリンとコーラ(温めて気が抜けている)の色が似てはいるもののまったく別のもの。最終的には飲めばわかる。まずい。
    話は、ガソリンスタンドの部屋の中に給油機があり、外の車に給油の仕方が解らない店主とそのガソリンスタンドにコーラを飲みに来る常連の小学生の女の子が炭酸に弱くコーラをひと瓶飲みきれないため、試行錯誤している。二人とも死んだのちそれを解決できるのであるが、それまでに色々なことを体験していくのである。生と死が混在し、解りにくいのだが、そこが劇名に関係しているのだろう。

  • 満足度★★★

    売れないガソリン
    冒頭から会話のすれ違うもどかしさ全開で、その“伝わらなさ”が孤独感を呼ぶ。
    生者と死者がすれ違う舞台で、実は生きている者同士もすれ違っている。
    ちゃんと話が通じるのは死んでからなのか…。
    暴力的なまでに一方通行のコミュニケーション、シュールな展開の中に
    私たちの現実が透けて見えるような舞台。

    ネタバレBOX

    客入れのBGMがめちゃめちゃカッコよくて、でもロックについてはよくわからない。
    あー、劇団の人に聞けばよかったと後悔した。
    舞台下手奥にバーカウンター、その手前にガソリンの給油スタンド、
    上手奥には店の入り口ドア、手前に古いソファとボロボロの椅子が置かれている。
    古タイヤや雑誌の束が雑然と置かれ、BGMが抜群にはまる。

    近未来、超過疎、高齢化の地方都市で
    シンタロー(日暮玩具)はガソリンスタンドの店長をしている。
    車なんてめったに来ないのに、たまに来ても給油スタンドのホースは車まで届かない。
    このスタンドでちゃんと給油できるのはバイクだけだ。
    弟のユージロー(加地竜也)は人とうまくコミュニケーションが取れない。
    シンタローの嫁マキコ(中村榮美子)は亭主とその弟を怒鳴りつつ距離を置いていたが
    ある日ついにパートに行くと言って出たまま戻らなかった…。

    子どもの頃父親とガソリンスタンドに来るのが楽しかったからという理由だけで
    車の来ない過疎の都市で、致命的な欠陥物件を買ったシンタローは
    この時点でもうニーズも状況も見ない、単純な情熱だけで生きていると判る。
    嫁の不満はそこに集中していく。

    登場する人物は誰も自分の目的を果たすことができないまま
    不条理な状況でもがき続けている。
    暴力的なまでに一方通行のコミュニケーションが行き交ううちに
    一人ひとりの孤独な姿が浮かび上がってくる。

    後半、男たちが狭い使命感と格闘しているのに対して、女たちは一気に行動に出る。
    “死”に対してためらわず踏み出し、ずんずん突き進む様は
    “変えたいのに変えられない”前半の展開がもどかしいので小気味よいほど。

    ユージローと常連客のチカゲ(加藤亜依)が
    舞台床の丸い穴から出て来た理由が明らかになって
    初めて死者と生者が共存していたこと、ユージローがその境界にいたことが判る。
    生前誰ともコミュニケーションを取れなかったユージローが
    実は全ての人の声を聴くことができたと知って哀しい気持ちになる。

    シンタロー、ユージローを始め、女性政治家から取ったかのような名前が
    ギャップを感じさせてちょっと面白い。
    照明の美しさが印象的。
    テロリスト(?)に変身したマキコを演じた中村榮美子さんが強くて美しい。
    チカゲを演じた加藤亜依さん、ランドセルが異様に似合って、一瞬子役かと思ってしまうほど。
    コーラの瓶の中身を一気飲みしたりお弁当を食べたり
    ラーメンを本当に作って食べたりと、“食”に関して妙にリアルなのが可笑しい。

    何だかシュールで不条理な展開にびっくりしてよくわからないところもあったが
    これをおとなしく小さくしたのが私たちの日常なのかもしれない。
    一方通行のコミュニケーションがすれ違い、誰にも届かない…というのは寂しいことだ。

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