魔王、勇者僧侶盗賊魔法使い、現実。 公演情報 魔王、勇者僧侶盗賊魔法使い、現実。」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 3.0
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  • 満足度★★★

    形になっていない面白さ
    学生劇団特有の(という言い方をしたら上から目線で申し訳ないが、他に形容のしようがないので悪く思わないでください)
    完成度は高くないけれども、形になっていない面白さが随所に見られた。

    ネタバレBOX

    どこまで自覚的に演出されたものかはわからなかったが、
    演劇の嘘をドキュメンタリー性とでもいうべき役者の身体で解体する(相対化する)ような演出が興味深かった。

    例えば、ロールプレイングゲームの登場人物に役者は扮しているのだが、そのファンタジー的な世界観の衣装を着ている役者もいれば、普段着で役を演じている役者もいる。その普段着も、魔王役の女の子は、ダボダボのジャージ姿という、間違ってもオシャレとは言えない部屋着のような姿で役を演じている。そこには、衣装や美術などで虚構世界を作り上げようという演劇の一般的な在り方を解体しようという意志を強く感じる。

    また、役者の演技も、意識的にそう演出させられているのか、単にヘタなだけかわからないが、役者が役になりきることで生まれる演劇的リアリティではなく、役者が役になりきれないという生身の人間のリアリティがよく出ていた。特に魔王役の櫻井美穂さんの演技は、そういう意味で興味深かった。(意識的なものでなかった場合、この言い方はけなしているように聞こえるかもしれないが、その感じも、作品によっては強い武器になると思うので、決してけなしている訳ではありません。悪しからず。)
    渡部太一さんと小杉香穂里さんの演技は、そういう意味ではちょっと上手い感じもするのだけれど、やはり同じ質感を有している。ということは、これらは演出されたものなのだろうか?
    (渡部太一さんは、〈TEAM▷りびどー大戦争〉の『libido』という作品で拝見していて、とても良い役者さんだと思ったが、その時の印象も、演技が上手いというよりは、彼の人間性みたいなものが役の中から滲み出てくるような良さだなと思っていたので、今回の作品で見た印象と近い感覚。)

    いずれにせよ、どこまで意識的に演出されたものかはわからないが、その点がとても面白かった。

    脚本は、題名からただのエンタメ作かと思っていたら、ロールプレイングゲームという形式を借りた、正義と悪の問題、個と世界、虚構と現実の問題などが様々に提起されて、深い問題意識のもとに作られているのだなと感じられてよかった。

    ただし、演出も脚本も、面白いものがたくさん含まれてはいても、いかんせん荒削り過ぎるとは思った。何が中心なのか、演出も脚本も見極めきれていないのではないか。


    今後の活動に期待しています!

    と言っても、洗練していく上で、完成度は上がったけれど、普通の芝居になっちゃったねということにはならないでほしい。
    この作品の面白さは普通の意味での面白さではではなかったので。

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