満足度★★★
初演時よりも美しい印象でした。
ものすごく、ものすごく楽しみにしていた舞台。
一昨年の「引き際」でも、震災直後にあそこまでふざけたことができる脚本に感動しましたが、昨年の「なまず」は、それをさらにグレードアップした感じで素晴らしいかったです。
重いテーマを重くやってどうするんだ、という天顔大介監督の姿勢がとても好きです。
ふざけて、茶化して、問題をしっかり提起して、ドギツイことを真正面からぶつけてくる。
時代の空気感をちゃんと読み取りながら「一歩早いのかもしれない」そのタイミングで、ギリギリの真実を投げつけてくる。
今だからこそ、その発言に意味がある、というものをちゃんと提示してくるあたり、観ていて嘘も欺瞞も諦めも無くてとても好感が持てるのです。
楽しいことも、夢みたいなことも、ちゃんと見ていたいけれど、でも、そういう色々を見つめる同じ視線で、変わってしまった世界も認めて受け入れないといけない、と思うのです。
そして世界が変われば文脈も変わり、同じことをしても、同じものを見ても、それ自体のもつ意味が変わってしまっている、
ということを理解した上で発信されるものにこそ心動かされるのだとおもいます。
天顔大介監督の視点は清々しいほどに真っ直ぐで気持ちいいです。
昨年とはまた変わった文脈のなかで、同じ演目をどう調理してくるのか、そこが今回の見どころでした。
そんな再演は、初演時の衝撃が強すぎたせいか、やけに上品にまとまり過ぎている印象で、若干の物足りなさの残るものでした。
冒頭に、初演時にはなかった講壇の形で世界観をみせるところは面白かったです。
他はほぼ初演時と同じ構成・演出。
全体には初演時の良い意味での小屋まるごとのゴチャゴチャ感が薄れて上品にまとまってしまった印象です。
劇中の舞踏が初演時の池田遼さんから舘形比呂一さんへ変わったことも、全体を上品で美しい印象に変えた大きな点かもしれません。
でも、あれはあれでいいのかな。
小屋も神楽坂die pratzeから芸術劇場シアターイーストへ変わったことだし。
客層も、あまり普段お芝居を観ないような雰囲気のご夫婦連れや舘形比呂一さんのファンのような方が多かったし。
「泥臭くて禍々しい世界」から「綺麗で絵空事のような世界」へ印象を変えたのは…だから故意なのかな。
とか、観劇してから1週間がたって思ったりしているのでした。
2013年という時代とのマッチングの問題でしょうか。
そこにまだ疑問が残るので、初演時のDVDを観て、また考えたいと思います。
満足度★★★
再演作、前作未見
震災を連想させるブラックユーモアな内容。未来の日本、東北王国が中心の舞台。
幕開けの講談芸による講釈で漠然と筋を把握、女流講談師の田端さん、聞きやすかった。
震災後の放射能関連の無自覚意見とか、知らず知らずに見たくもない意見に惑わされたりで、それらをあえて遮断していた時期があり、その時の事を思い出し途中ついて行けない場面もあった。
それらとは別にして、東北の歴史や生活の下地が馴染んでいる人には理解しやすい話なのかも。
さらら嬢の当たり役?とも言える蝉時雨蝶子のまんまレビューは劇場が一時アングラ劇場にいるかのようだった。美人なのに狂人へ変貌、と振り幅の拡さは相変わらず凄まじく、見ていて面白い。
館形さんのなまず乱舞は美しく見惚れた。
歩さんの自由さに笑い、田端さんもさららさんに引けを取らない堂々の怪演。
約130分。