緊急座談会?『舞台とリアリズム』
A「『朝起きると 自分が誰なのかを確認する』というから哲学チックな舞台だと思ってた。でも実際、観劇してみると、ファンタジーの中にもサスペンス性があり、老若男女を飽きさせない構成だったね」
C「完全にイットクルゼの紹介文通りじゃないですか」(笑)
A「たしかに、イットクルゼの狙いは的中してる(笑)
まあ、狙いは的中してるが、僕なんかは最初の30分が不安でたまらなかった。小劇場の世界でも、主要キャストの一人は標準的な女性が必需だ。でも、ストーリー上の主要女性キャスト3人、役柄とは関係なく、みんな若干ぽっちゃり だった。
観客の立場からすれば、そこに気が反れてしまう面はあったから。ただし、この問題は東京ミルクホール主宰の佐野さんが言ってたことですので…ご勘弁を、何つって」
B「なんか違うと思う。演劇というのは、若い女性が老婆を演じたり、逆にお爺さんが幼児を演じることに価値があるのでは?」
A「その方が、演劇の魅力を引き出す場合もある。ただ、今回のイットクルゼの舞台は、ドラマ的だったから人物を違和感なくみせることが大事だよ」
C「昨年末、目黒パーシモンホールにて、『ミュージカルCARE WAVEAID 〜平和宣言3.11〜』が上演されたのですが、レミゼラブルなどに出演する女優さんの他、宮城県・気仙沼などの被災地からも多くの高校生達が参加したんです。やっぱり、それって演技だけではない、リアルな体験に基づく身体性があったから心に響く」
A「若い世代による戦争のミュージカルは よく上演されるけど、演者側の歴史教育がメインだ。パレスチナ自治区の若者が繰り広げるミュージカルの方が訴えかけるだろう」
B「この議論だけは納得できないな…。ミュージカル・テニスの王子様、略してテニミュって知ってる?」
C「姉が観に行きますよ。斎藤工くんにハマって以来(笑)本人は卒業したんだけど、20歳前の男子が初演時からドンドン成長していく姿がいいみたい。母親かよって!(笑)」
B「生みの親であるニコ動運営会社・ドワンゴ執行役員の片岡義郎さん の話を伺ったことがあるけど、そこのインセンティブを漏らしてた。でさ、片岡さんは、アニメと演劇は脳内で構成するものだと主張しているの。テニミュの試合も、サーブやスマッシュを光で演出する。観客は それを脳内でボールに置き換えて構成して、熱戦を感じるんだよ。
つまり、演劇はリアルさ より、演者や演出から生まれる観客側の脳内構成が遥かに大切だといえる」
C「ああ」
A「脚本が良かった。『バックトゥ・ザ・フューチャー』シリーズのハラハラ感と似ている。殺されるはずの女性と、2年後の女性。時を越えた愛情というテーマ。
僕としては、ラスト、事務所を訪ねる形もありだったかと心残りだ」
C「はい、心残りですが、…前半のファンタジー系と後半のサスペンス系が、とてもマッチングしていました!前半がなければ、単なるサスペンス系になりかねなかった。あと、東南アジア風の女性、声が通ってましたね。富士山まで届くかも」
B「総じていえば、今回の舞台は磁石だよ。幕が近付くほど引き付ける(笑)」