公演情報
「心を歩ませて。」の観てきた!クチコミ一覧
実演鑑賞
満足度★★★★
著書になった実話をベースに書かれた芝居で、原作「さばの缶づめ、宇宙へいく」の「さば缶」とは宇宙食のこと。実際に福井県の小浜水産高校で「宇宙食」として認定されるための開発を課題として一年という単位でなくまた三年でもなく年々受け継いで来た訳でもなく、この課題に関心のある生徒が在校した年に、先代が探求した成果を記したノートを開きながら、断続的に開発が受け継がれて行った結果、ある年さば缶は宇宙食として認定されるに至った・・その断続的歩みを、この芝居では「市民劇」という枠組を用いて叙述していた。
ネタが実話である事と、地域の市民参加劇の「あるある」という実際に存在するものとの取り合わせで、両者に等しく比重が置かれた描き方がなされていた。場としての市民劇要素が、さば缶宇宙というネタの強さに感化されるという展開はなく、淡々と描いていたのが巧い距離感と思えた。ただ、市民劇参加者の群像を描く余地はやはり「さば缶」にも場面を割かねばならぬ関係でさらっと触れるに止まり、観る側としてはもう一歩人物の深みを味わいたく思った。この劇の構造では、しかと描き取りたいのは市民劇参加者。そして彼らはさば缶のエピソードに敬意を払う事となる者たちであり、彼らが照射する事で、さば缶エピソードが輝く。
従って市民たちのリアルで切実な生き様が造形される程に、両者が高まって行く関係にある、と自分は見立てているが、芝居にも尺というものがある..と思えば「あとは己が想像を羽ばたかせよ」、という事かな..とも。
いずれにせよ今作は東京芸術座の新断面と見え、今後劇団がどう歩みを模索していくか、漠然とながら楽しみである。