公演情報
「home〜りんごさんのうた〜」の観てきた!クチコミ一覧
実演鑑賞
満足度★★★★
津軽バージョンの回に当たり(観劇日が一択につき)、前情報ほぼ無しで観劇。渡辺源四郎商店の常連客演でもある三上氏を、やはり青森人であったかと改めて認識し、今回のタイトルや上演バージョンから今作はその公式カミングアウトになる作品?と思い巡らしながら劇場を訪れた。その予想通りな風景が立ち上がっている。
津軽弁はモノホンで細部の聴き取りが大変なため、役者の身体からニュアンスを汲み取ることに。
実は津軽バージョンと東京バージョンは俳優が違う(二役のみシングル)。何処かで観たなぁこの感じ、、との思いが募り、脳内をまさぐっていて思い出した。その役者の名は、かの弘前劇場の看板?俳優福士賢治氏であった。
津軽弁の語彙と、ごにょっとした口調の台詞を繰り出す「発語者」であり、「演技」と言える作為や技巧等とは無縁な佇まいで、長谷川孝治氏のテキストを伝える長身の男・・十数年は経っているが殆ど変わらぬ風貌である。
東京りんごバージョンには歌える山﨑薫に山像かおり、外波山文明らが並び、こちらも観たかったが叶わず。
田畑の風景が広がる土地に家を建てて住み始めた夫婦。妻のお腹には赤子がいる。そんな時、尋ねてきた不思議な少女。宅地造成する前はりんご畑があった。庭の土に足を付け、気持ちよがる姿に、りんごの精?と訝る。時を遡って・・夫の父母がりんごの収穫期を迎え、尋ねて来た不動産屋の男にりんごを一箱やって驚かれている。夫が先に亡くなり、続けられなくなったと妻。彼女はりんごの精と仲良しであった。りんごの木を伐採する日が来る。薪になる成木を刈った後、若い木が残った。薪にもならねえこれ、どうする? 伐るに忍びなく思った作業員が、根っこを引き抜いて自分の田んぼの脇に植え直した。時は戻って・・りんごの精の訪問を受けた夫婦。庭に出たいと言い、足で土をまさぐって気持ちよさそうにする少女を見て、夫は感づく。夫の前身は海に住む存在だった、という仄めかしが序盤にある。足に鱗のあった跡が残るのを、時折見ている。少女はそれに気付く。その土地の一つ前はりんご畑、その前は山で、そのうんと前は海だった・・。現実の時間と、生まれ変わる前を思い出す時間とがあるような、境界がないような、ぼんやりした設定だったかに思うが、終盤、男はそのりんごの精の大元の木が、宅地化作業の時に持ち去られた木かも知れないと、その場所に行ってみると、少し前に数本あった木は刈られた後だった。人間の営みを静かに見守り、翻弄されたり人間にも生まれ変わったり、互いに交わり共生する存在としての自然を、擬人化によって描いた作品、と言ってしまえばその通りであり、それ以上でも以下でもない。
演出として残念であったのは、自然に属するりんごの精(少女)と人魚の生まれ変わり(夫)が思いを通じ合わせる二人だけをラストの風景とした事。人との共生の可能性を感じさせる妻、能うなら作業員や不動産屋も、(現在を生きる人であるので)その光景に加わりたかった。