閨房のアライグマ  公演情報 閨房のアライグマ 」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.0
1-2件 / 2件中
  • 満足度★★★★

    観た。
    父と娘の愛の物語だが、構成が面白く更に歌ありダンスありで楽しい2時間。
    登場人物それぞれキャラがたっていて、複雑そうなストーリーだが分かりやすいのがさすが。メッセージもしっかりあるのが良かった。

  • 満足度★★★★

    台詞の瞬発力
    無理やり腕を掴まれて引っ張られるような勢いで始まったと思ったら
    なんだよこの親子、ボロ泣きしちゃったじゃないか。
    ひとつひとつの充実したエピソードが積み重ねられて最後のオチまでハラハラし通し。
    キャラの立った登場人物と役者が見事にマッチしている。
    歌って踊ってこの構造、森岡利行さんの繰り出す台詞にマジで泣かされた。

    ネタバレBOX

    桜子の父親サクジロウ(伊藤新)は、昔よくお話を読んで聞かせてくれた。
    まるでホラ話のような父の創作物語は、桜子を楽しませ無限に広がっていく。
    月日は経って、そのサクジロウが死んだ。
    火葬場で、喪服の桜子(森田亜紀)は白装束の亡き父作次郎(中原和宏)と語り合う。
    やくざの兄利夫(柴田明良)、中国人と偽装結婚した叔父忠利(酒井健太郎)、
    桜子の出自に関わる、交通事故で重い障害を負ったレイコ。
    桜子の娘愛美(長澤佑香)がなさぬ仲であることも絡んでドラマチックな
    あまりにドラマチックな親子を取り巻く人生が語られる・・・。

    舞台上隅の方に長椅子がひとつ、さっぱりしたセットは火葬場である。
    白装束の亡き父と語りながら、父の言葉に次第に変化していく桜子の表情が素晴らしい。
    最初の淡々とした語り口が、自分の出自や娘との確執に及ぶラスト
    愛情が溢れ出して、観ている私たちがいつしか桜子の感情にぴったり寄り添っている。

    人情やくざの兄利夫を演じた柴田明良さん、悪者やくざ役の重松隆志さんがはまりすぎ。
    Vシネテイストあふれる緊迫したやりとりが素晴らしく迫力があって
    これから始まる悲劇へと自然に流れ込んでいく。

    障害を負ったレイコ役の住吉真理子さん、あまりのリアルな障害者ぶりに
    初め“痛すぎ”の感も覚えたが、もし仮にこれが曖昧な表現だったら
    その後の悲劇的なレイコや利夫の行動に説得力が生まれなかっただろう。
    どれほど勉強し、工夫しただろうかと思わせる演技だった。

    出稼ぎ中国人麗華を演じた桐山玲奈さん、変な日本語が上手くて可笑しい。
    単なる物まねでないキャラが立っていて、哀しみと共に存在感が“有馬温泉”。

    若き日のサクジロウを演じた伊藤新さん、真面目でひたむきな公務員らしさと
    “面白味のない性格”と言われながらも“それでいいじゃないか”と
    自分を奮い立たせる孤独な強さが自然に共存していてとてもリアルだった。
    この父親がベースにあっての、桜子の思いなのだということが伝わってくる。

    亡くなった作次郎を演じた中原和宏さん、その存在感に圧倒されっぱなし。
    もう素なんだか役なんだかわからないくらいの歌(上手いのだこれが)が
    アングラの香りをぷんぷんさせていい味を出している。
    この“歌うオヤジ”がバリバリ関西弁で、
    若き日のスマートなサクジロウとすんなり重ならないのが難と言えば難だろうか。
    どこかでちょっとリンクさせる台詞があれば、逆にその変遷も面白かったかもしれない。
    それにしてもこのホラ親父の言葉は味わい深くていい台詞だなあ。

    住吉真理子さんの歌うビートルズの「In my life」(だと思ったけど)が
    あんまり素敵でぴったりで、ラストめちゃめちゃ泣けてしまった。
    父を喪いたくないという桜子の気持ちが切ない。

    当日パンフで作・演出の森岡氏が語っているが、この作品は
    いろいろあったけれど20周年を共に迎えたメンバーに喜んでもらおうという
    気持ちで書いたのだそうだ。
    「自分は劇作家ではなくシナリオライターだから、新作を書くのは辛い」と言うが
    ひとつひとつのエピソードが持つ台詞の力が素晴らしい。
    台詞の瞬発力とでもいうのだろうか、”キメの台詞”と”自然体の台詞”とが混在している。
    桜子が、現実の人々からドラマチックな想像を膨らませていく二重構造も自然だし
    何と言ってもそれが亡き父から受け継いだ性格であるということが、
    親子の強い絆を表わしている。

    桜子が亡き父に語りかける「閨房のアライグマ」のエピソードが
    思いがけないイメージから人生を深く洞察していて泣かせる。
    こうしてひとつ終わる毎に、私たちはまた毛づくろいして歩き出すのだ。

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