「増える部屋」神奈川公演 公演情報 「増える部屋」神奈川公演」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 3.0
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  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    開演前は客席に強いライトが当てられていて舞台がよく見えない。始まると色とりどりのシーツや布が天井から何枚も垂れ下がっている。どうやらこれが沢山の部屋を表現しているようだ。レイヤー(階層)が奥行きとして積み重なっていることをカーテンで表現。雑然と枕やらクッションやらタオルやら洋服やらがそこらここらに散らばっている。時折、突然シーツに投影される「うたビデオ」。ウクタ(北みれいさん)が自撮りしたその時々の気持ちを切り取ったもの。ウクタの瞬間のその気持ちが脈絡なく呟かれる。

    西奥瑠菜さんと薮田凜氏の二人芝居。北みれいさん演じるウクタが自分の住んでいるシェアハウスに二人を呼ぶ。三人は大学時代の友人。
    西奥瑠菜さんはイベントコーディネーターだが自分の言葉や思いがどうも上手く伝えられず企画はなかなか通らない。
    薮田凜氏はコンサル会社勤務でタワマンを買うのが夢。会社の不正の証拠である書類の処分を頼まれて何処かに隠さないといけない。今日が28歳の誕生日。

    ウクタの頼みはどっかに行っちゃったシベリアンハスキーの縫いぐるみを見つけて欲しい。増設されていった奇妙な作りの家の為、迷宮のようになっていて何処が何処だか分からない。二人はここが本当にウクタの部屋なのかも分からず住民に確認しようと辺りをうろつく。部屋なのか廊下なのか仕切りも曖昧なラビリンス。いつのまにか誰かの部屋にいて謝罪し、いつのまにか誰もいない部屋で取り残されている。

    いろんな人間に出会うのだが互いによく分からないまんま。西奥瑠菜さんと薮田凜氏がひたすら別人役をやり続ける。変装もせずにそのまんま。それが不自然じゃないのが面白い。

    妙な面白さ。感触の世界。二人が魅力的。
    是非観に行って頂きたい。

    ネタバレBOX

    生き辛い世界に悩んでいたウクタが人と上手くやれないで悩んでいる連中を呼び集めたシェアハウス。NPO法人のひきこもり支援のような場所。ずっとここに居てもいいし嫌ならここを出て行ってもいい。沢山の人間が自由に共存するシステム。虚構なら理想郷だが現実なら地獄かも。それでも観てる間だけほんの少しでも気分が楽になれればいいんじゃないか。ふっと気が逸らせればいいんじゃないか。そんな演劇。一生懸命引っ越しの準備をしている女性。捨てられなかった物達との別れの区切りが付いた。自分の中で自分の経験を消化すること。今ならここを出て行ける気がする。そんな気持ちを手に入れる為にモラトリアムがあるんだな。最強の武器はその気持ちだ。

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