公演情報
「泣き虫なまいき石川啄木」の観てきた!クチコミ一覧
実演鑑賞
満足度★★★
笑いは多く散りばめられているのに、作品全体に漂うどんよりとした暗さと重さの調合が独特の空気感を醸し出していて興味深い。山西惇のダメ親父が憎たらしくて良い。
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2025/12/21 (日) 13:00
座席1階
何年かぶりの再演で、初めてこの作品を拝見した。タイトルにあるような石川啄木に焦点を絞った戯曲ではなく、その家族や友人の群像劇。「一握の砂」など庶民の生活や心を描いた歌人の人生に関わった人たちの人間物語だ。
あくまで啄木の物語だから周囲の人たちは脇役ということになるが、どの役者も素晴らしい存在感である。なかでもこまつ座にたびたび出る山西惇は出色の出来。啄木の父で、酒に溺れ赤貧の家族の貴重な着物まで質入れしてしまう禅宗の坊主という役どころだが、とんでもない男なのになぜか憎めないキャラクターを演じ切っている。
ほぼ全員が二役で、その味わいもいい。物語に大きな起伏があるわけでなく、舞台はほぼ一貫して啄木一家が暮らした東京の下宿で展開されるが、休憩を挟んで3時間飽きることはない。脚本に力がみなぎっているだけでなく、役者たちの力の結集が大きい。こまつ座の舞台のなかでも、とてもいい座組だったと思う。再度のカーテンコール、スタンディングオベーションはむべなるかな、だ。
ただ、舞台転換の暗転が少し長いのが難点。少し間延びする時間があったのは惜しまれる。