公演情報
「我ら宇宙の塵」の観てきた!クチコミ一覧
実演鑑賞
満足度★★★
客入れSEにデヴィッド・ボウイ「I Wish You Would」が流れる。何故かそれだけで気分が良い。
ステージ上に置かれた椅子に突っ伏して寝ている宇佐美星太郎(しょうたろう)少年のパペット。幼稚園児位の大きさ。肌はフェルト生地っぽく見える。毛玉が付いている。背面は全て壁面に貼り付けたようなLEDビジョン。どうなっているんだか分からないが迫力満点。星太郎は首の後ろの下辺りにグリップが付いている。後頭部の真ん中にも掴む部分が。左手でグリップを掴み、右手で頭部もしくは他の部分を動かす。歩く時は自分の靴の上に星太郎の足を載せて一緒に動く。床に大量に散乱している紙には何がが書かれている。床の穴から次々と人々が出て来て開幕。
多分、今作が評価されているのは語り口なのだろう。一見何の話なのか全容が見えない。『インターステラー』的なものを期待していたが全く違った。どちらかと言えばジョディ・フォスターの『コンタクト』か。
小沢道成氏を初めて認識した。星太郎を操演。
異儀田夏葉さんは観る度に美しくなっているように感じる。プラネタリウムの背景が高速で移動する度、一人パニックを起こす設定は面白い。
渡邊りょう氏は今回も流石の強キャラ。今年何度観たことか。泣き上戸、笑い上戸の発達障害。彼の小太郎のエピソードからぐんと面白くなった。
※しょうたろう=正太郎だと思っていたので「鉄人28号」から名付けたのかと誤解。
実演鑑賞
満足度★★★★★
2023年の夏に偶然新宿の小劇場で見て、マッピングを上手に使った生きの良い新時代ファンタジーだと感心した。それから2年。
その間に、23年度の読売演劇大賞は「作品賞、「演出家賞。「主演女優賞を受賞、今年はロンドン公演もやってのけ(まぁ小劇場だろうが)多くの新聞があって劇評の多いロンドンでも、絶賛の星が並んだという(チラシの宣伝)。解らぬでもない。
演劇界を見れば、野田秀樹は確かに日本演劇のリーダーの作者だが、なかなか追いかける若者が出てこない。いつも、野田が焦れている。エポックマンは野田系のインプルーブ版であるが、まだ余力もあるし、期待も持てる。。
かつて初演(23年)を見たときは、パペットやマッピング、物語の作り方など、新しいセンスに感心したが、一方で登場人物の意外に地に着いた現代の単親の一人っ子物語(その子をパペットにしたところなど秀逸なアイデア)が生活感を持ってきめ細かく出来ているところ、などもよかった。(例えば、全自動シアターなどは、同じ路線で一人っ子モノで成功したが、結局、世相ギャグに終わって、野田を超える力がなかった。ようやく、最近リアリズム路線で横山拓也が追撃して見せたが、こちらは自分の世界のリアリズムへのこだわりが強くで野田の上を行稿とは考えていないだろう)。ここは野田と違うところで、野田はファンタジーに現実も寓話もなじませてしまウが、小沢は現代の現実の中にファンタジーを溶けこませてしまう。野田を追っても、独自性もしっかりあって。他の作品でも独自性を持ち、観客への訴求力(オセンチ)も上手い。再演(今回)はラストに近い父親とのシーンを固めに仕切り直している(後半)。ロンドンではこうしないとメルヘンに逃げて腰砕けと言われそうなので直しているのだろうが、そこをどうするかは課題だろう。
作風が現代の都会的センスで、しかも頭デッカチでないところも、野田のように最後に何が何でも情感に持っていき少女ファンを訳も分らず泣かせてしまおうとしないところも、(ことに80年代まではその傾向が強く野田クライマックスに閉口した見物も多かったのだ)新しい作家の登場を感じさせる。(私はラストの処理は初演の方が好きだが、もちろんロンドン帰りと思えば、そこでこれに変えられるのもたいした物だとは思う)。まぁこの三年ほどの中でみたもののなかでは必見の秀作とは言えよう。
一言付言すれば、作る側が、芝居は見せ物であることを忘れていないのが素晴らしい・